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パンを食べなくなった

 パンを食べなくなった。決まって食パンを焼いて食べていた朝の風景が懐かしい。トースターの出番はめっきり減ってしまって、少し寂しそうに見える。
 朝パンを食べなくなったなら、圧倒的にパンを買わなくなった。近所のパン屋は私が帰宅する頃にはシャッターを下ろしている。スーパーやコンビニでわざわざ買う気はない。そうなると休みの日も買わない。たまに食べたくなるけれど、不思議と買いに行こうと思わない。
 しかしパン屋やパンの写真を眺めるのは大好きなので、パン屋の前を通りかかるとじっと見てしまうし、携帯をいじっていると、よく美味しそうな料理の写真の中にもれなくパンも登場する。
 おいしそうなサンドイッチ。具の好みは薄いハムと胡瓜、スライスチーズ。たっぷり塗ったジャムも良い。苺、ラズベリー、ママレード、ブルーベリーも好ましい。バターは苦手だけれど発酵バターなら大丈夫。オリーブオイルも大丈夫。
リッチな食パンよりも、フランスパンや胚芽パンなどのあっさりした味のパンが良い。何も考えずにカロリーの塊のようなパンを食べたくもなるけれど、食べたあとのことを考えると手が出ない。
 パン、本当は食べたい。食べたいけれど、また毎朝食べたくなってしまうかもしれない。パンの価格が値上がりしたこと、体のことを考えると米の方が良いことなど理由があってパンを食べられない。いつも一緒だったのに、どんな時も切らさないように必死だったのに、まさかこんな形で疎遠になるなんて思ってもみなかった。人生何が起こるか分からない。けれど永遠の決別ではない。たまに二切れだけ個包装で売ってるパンを見かけると買ってしまう。二切れだけならいいかと思って。そんな自分への甘やかしはいつもではないけれど、また会えることを楽しみにしていよう。

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