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岡井隆の歌集が届く、全貌は未だ見えない

先日ヤフオクで競り落とした岡井隆の歌集7冊と評論1冊が、先ほど届いた。状態の良い本ばかりで大変嬉しい。

岡井隆の歌集7冊、評論1冊

塚本邦雄、寺山修司とともに戦後前衛短歌の旗手と評される岡井隆の短歌を、しかし私はまだちゃんと読んだことがなかった。

この前の『歌壇』1月号での奥田亡羊による「短歌地図が違う」の中の一節を読んで、自らの勉強不足を恥じ入って、まずはちょうど目に止まった古本を手に入れた次第である。

学生短歌界にいて歌壇を語りながら、岡井隆を読んでいないということがどうして起こりうるのだろう。

奥田亡羊「短歌地図が違う」より(『歌壇』2022年1月号収録)
奥田亡羊の記事のみならず、他の歌人の記事も大変刺激的で楽しい特集です

それにしても、岡井隆が生前に残した歌集・短歌の数には圧倒される。生前最後に出版された歌集『鉄の蜜蜂』の帯には確か「第三十四歌集」と書いてあったと記憶している。全貌が見える気配はまったくない。

岡井隆のWikipediaの記事や未来短歌会のサイトをもとに、試しに岡井隆の歌集をリストアップしてみた。それでも抜けや間違いがあるかもしれない。第一歌集が文庫で復刊しているのは、初学者には本当にありがたい。

※2022年2月17日に、入手した『現代短歌』2021年3月号の「歌集解題全34冊」をもとに、加筆修正。

『斉唱』白玉書房 1956/文庫版『斉唱』現代短歌社
    第一歌集文庫 2020 文庫版解説:鳥居
『土地よ、痛みを負え』白玉書房 1961
『朝狩』白玉書房 1964
『眼底紀行』思潮社 1967
『鵞卵亭』六法出版社 1975

『天河庭園集』国文社 1978
『歳月の贈物』国文社 1978
『マニエリスムの旅』書肆季節社 1980
『人生の視える場所』思潮社 1982
『禁忌と好色』不識書院 1982

『αの星』短歌新聞社 1985
『五重奏のヴィオラ』不識書院 1986
『中国の世紀末』六法出版社 1988
『親和力』砂子屋書房 1989
『宮殿』沖積舎 1991

『神の仕事場』砂子屋書房 1994
『夢と同じもの』短歌研究社 1996
『ウランと白鳥』短歌研究社 1998
『大洪水の前の晴天』砂子屋書房 1998
『ヴォツェック/海と陸 声と記憶のためのエスキス』ながらみ書房 1999

『臓器』砂子屋書房 2000
『E/T』書肆山田 2001
『〈テロリズム〉以後の感想/草の雨』砂子屋書房 2002
『伊太利亜』書肆山田 2004
『馴鹿時代今か来向かふ』砂子屋書房 2004

『二〇〇六年水無月のころ』角川書店 2006
『家常茶飯』砂子屋書房 2007
『初期の蝶/「近藤芳美をしのぶ会」前後』短歌新聞社 2007
『ネフスキイ』書肆山田 2008
『X-述懐スル私』短歌新聞社 2010

『静かな生活 短歌日記2010』ふらんす堂 2011
『銀色の馬の鬣』砂子屋書房 2014
『暮れてゆくバッハ』書肆侃侃房 2015
『鉄の蜜蜂』角川文化振興財団 2018

現在、岡井隆の歌集全集は、2005年から2006年にかけて出版された全4巻の『岡井隆全歌集』が最新だろう。それには『〈テロリズム〉以後の感想/草の雨』までが収録されている。

だから今、岡井隆のすべての短歌を手元に置いておこうとすれば、『岡井隆全歌集』全4巻と、(おそらく第二十四歌集にあたる)『伊太利亜』以降の11冊を入手するのが最善手、ということになるだろうか。

短歌の初学者としての勝手な願望ではあるが、塚本邦雄同様、岡井隆も文庫版の全歌集をぜひ出版してほしいと思う。

先にも引用した、『歌壇』2022年1月号のなかで、図書館を活用すれば、岡井隆の全集にも簡単にリーチできるではないか、との旨を奥田亡羊は書いている。

また彼は、歌集が読みたくても、学生には歌集の値段が高すぎるという。買えるのは書肆侃侃房の歌集までなのだと。しかし大きい図書館には全集もあるではないか。それとも書肆侃侃房が出版する若い歌人の歌集にしか興味がないのだろうか。

奥田亡羊「短歌地図が違う」より(『歌壇』2022年1月号収録)

確かに正論。私の住む市の図書館にもくだんの全集があることは確認した。

それでも、私は古い人間だからかもしれないが、やはり好きな歌集、勉強したい歌集は手元に置いていつでも(それこそ本当にいつでも)読めるようにしておきたい。

塚本邦雄や寺山修司のそれと同様に、岡井隆の歌集全集も、もう少し(経済的にも出版状況的にも)入手しやすいようになってほしい。

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