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ブランチとコヒーレント (14)

2022年6月のブランチ

6月2日、またもやライブ見逃す。RanaBというK-POP系を得意とするアイドルグループ主催のライブ。おじさんにはちょっと刺激が強すぎもシャープな振りはかっこよき。

配信でライブを観る。現場だと撮影したくなってしまい、どうしても曲への注意が弱くなる。配信で観ると臨場感は失われるけど、視覚と聴覚が両方が客観的になって観察の視点が変わる。繰り返し観れる事もメリットで、音源化されていない曲を刷り込む事もできる。

毎回は流石に無理だけど、ライブ参戦後に配信で復習し、自分の視点と異なる角度から観聽きして自分の視野の狭さを壊す事もなかなか面白そうだ。

ライブも良いけど配信を観るのも悪くない事を気づかせてくれた機会になった。

先月Music Bar Cordaで音楽の話になった時、コンセプトを伴って演じるアイドルの話になった。それぞれアイドルは何らかの特徴や傾向はある訳だけど、他には見られない、真似しても再現が難しい彼ら・彼女ら独特の要素があると魅力的に見えると言う話になり、頭の中から離れなくなった。その場ではそれを、世界観と呼んだ。

帰りがけの電車の中、検索しながらリンクの先の楽曲やMVをチェリーピックしていく。そして出会った ヤなことそっとミュート。

彼女らが演じる、反抗でも服従でもない、ゆるっとかわす様な緩さがありつつも芯がある様と、楽曲は不自然に媚びた感じが無い、グランジを感じさせる歪みがありつつも優しさや寂しさが混ざり合う。
歳をとるにつれて、燻る思いに悶々としながらも押し流されてしまう自分にとって、纏ってみたいしなやかさの方向性なのかもしれない。

発見した後、彼女らのサイトを見ると現体制終了の告知。せめて最後、彼女らのステージを自分の目で観たいと思い、チケット販売開始直後に予約。20分後には売り切れていた。

そして今日、ライブ当日の代わりの特典会に参加する。

ファンサービスと言えばそれまでだけど、こんな事もあり、エンターテイナーのファンに対する配慮の凄さと大変さを知る。

ねこさんとは以前と違い普段の自分で接する様になっていて、距離感は徐々に変わっている。ある意味フランクに、内輪になってきた感がある。しかし関係性は演者とファンである事に変わりは無い上に、交わす会話の量自体は以前より格段に減った。どういう間合いが心地よいのだろうか、自分でわからなくなってきた。



6月20日。燎が定期公演を始める。デビューして僅か3ヶ月。この前のめり感は想像を遥かに超える。

箱はMusic Bar Cordaから徒歩圏内。お店番メンバーが速攻お給仕モードで待機しているとの事で、腹ごしらえから。

こうやって、前線でスポットライトを浴びる人もいれば、それを下支えしている人達もいる。しかも命令されてやっているのでは無く、周りを見て、考え、判断している。こんな事が自然に出てくるのは、個人の資質もさることながら、何かしてあげたいという考えが生まれる環境がそこにあると言うことでもある。ギクシャクしていたらこうは行かない。

些細な事かもしれないけど、自分の中では燎だけで無く、周りの人たちへも応援を届けたい、という気持ちにになった。食事の後、店を出るときに「行ってらっしゃい」とちひろさん、菜月さん、みみさんに送り出され、行ってきます、と箱へ向かう。

燎の初の定期公演は、自分とは接点がまず無いであろう対バンのオンパレードだった。工藤ちゃん、令名の和歌、キラナ、Will never stop、そしてamuLse。こうやって対バンが集まり、それを体感する事で、世界が広がっていく。

燎の二人もソロでの演目があり、更に知らない側面を観るステージになった。全くキャラクターが異なる演者さんが次々と現れてきて、情報量の多さにまいる。

箱は基本的にハードロック系バンドが集う様な雰囲気で、照明も暗め、まず照明の色調が赤黒い。写真を撮るにはかなり条件が良くない。しかし、出来上がった写真は普段のアイドル的な感じでは無く、清濁併わせ吞むというか、泥臭くもがくというか。

お人形さんが立っているのではなく、人がそこにいる。それだけでカッコいい。
発表された新曲はSFアニメの挿入歌、ラスボスに立ち向かう主人公の、何か背負って絶望的な壁に立ち向かうかの様な。箱の雰囲気と相まって、今までと違う路線が更に増える。

これはまた面白いけど、一方で燎が向かう方向が定まっている感じはしない。たてみんさん、果南さん、ねこさんのコンビネーションはまだお互いの指向を互いに探りながらの様に見える。

自分はどう言うステージが好きなのだろうか、考えてみる。しかしこれと言うものは無い。そう考えてみると、こうやって行きたいと考えてそれを実践し、継続するってどれだけ大変な事だ。そう言う人達に、自分には何ができるんだろう。



自分には15年以上前に0から開発して、未だちまちま売れ続けているソフトウェアがある。これを作った最初は死ぬほど長い時間を短期間に費やして立ち上げた。このソフトに有用性を見出してくれる人は少ないけど、使ってくれるお客さんは今もまだいる。

立ち上げ当初、バグが多い中付き合って使ってくれたお客様達の笑顔が脳裏を過ぎる。そうか、そうやって支えてくれた人達がいたから今の自分がいるんだ。

次は自分がそうなる番だ。

2022年8月のブランチ

2022年夏。クソ暑い。
燎は着々とライブを重ね、2回目の定期公演も無事完了した。対バンが集まるライブでは、初見のお客さんがステージ前の手すりに乗って声援を送る様なシーンも出てきた。一方で自分は色々あってテンションは上がりきらないものの、徐々にコールに参加する様になってくる。



来月、9月9日にねこさんの生誕ライブが行われる。
ライブハウスは月見ル君想フ。自分は知らない箱だったけど、よくよく調べてみるとさまざまなジャンルの有名アーティストがこぞって立つ、有名な箱だった。ステージの背景には大きな満月、照明は控えめでとても大人な世界。

ねこさんの気合いの入れ方も半端なく、今までのイベントとは桁違いの準備が必要になりそうだ。

当然、こちらも一世一代の晴れ舞台を克明に写真に捉えようと、また舞台寸法から焦点距離を計り、シミュレート。寸法から焦点距離は直ぐに割り出せたものの、照明の具合はどうしょうもない。これはロケハンに行くしか。という事で、自分の都合に合う時間に月見ル君想フで行われるライブにそっと参戦。幸い写真撮影可という事で、対バンの演者さん毎に場所を変えながら撮影してデータを集める。

この箱はステージの背景にある大きな円盤にプロジェクターで月面を投影している。それに合わせてか、全体的に照明は柔らかで、特に前明かり、前から演者さんに当てる光は控えめ。結果、全体的に暗めになりその分鮮明な写真を撮るのは難しくなる。

そして、撮るとなるとやはり背景にはその満月を捉えたい。客席からの立ち位置、焦点距離、絞りを念入りに変えながらライブを撮影する。

やはりロケハンして正解だった。ぶっつけ本番は厳しかっただろう。燎には撮影が好きなオタクが複数いて、ロケハンの結果をLINEで共有。これで自分が下手こいても他の人がカバーできる。

自分はやはりコミュニケーションのリズムが良くなくて、相変わらず相手を笑わすことも会話を繋げることも何もできない。推しさんに伝えたい事は沢山あるのに。

どうやらそんな空気感は周りの人達やねこさんにも伝わるようで、周りから病んでるんじゃ無いか、とか、何かやらかしたのか?なんて声が聞こえて来る。当の自分はやっぱり話したいのだけど、それ以外の形ででも接点があれば良いのかもしれない。

そんな状況の最中、燎の二人の浴衣撮影会があり、当然参加する。大した会話もなく、撮影しておしまい。その後、ねこさんのインスタで自分の写真を使ってもらった。

素直に嬉しい。そうか、自分が出来る事はこれか。
言葉にはできないけど、写真で伝えよう。

この撮影会の帰りがけに、来月の誕生日あたりに渡そうとプレゼントを買う。お店の人と相談して品物を選んでいるときに「普段はどんな服装なんですか?」と訊かれる。あ、普段のねこさん全く何も知らないや。思わず苦笑い。お店の人のセンスを信じて選んだはいいけど、果たしてどうなることやら。

Music Bar Cordaに行っても、ねこさんと周りの人は談笑する中、自分とは一言も言葉を交わさず帰る事が増えてきた。けど今は、ねこさんの生誕に向けてできる限りの事をすればいいか。


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