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ブランチとコヒーレント (26)

2023年3月のコヒーレント (1)

2023年、3月に入る。刻の流れは本当に早い。
燎のライブに行かなくなって20日が経つ。これまでに20日以上燎のメンバーと顔を合わさなかった日は、多分年始の撮影会から再始動ライブまでの間だけかもしれない。

その間に気持ちが何巡かした。何かするときに、時間を空けても良い効果が得られる事は無いと思うことが多いのだけど、気持ちの場合はなんかあるなぁ、と改めて思う。

燎の炭火焼きラジオで投書を読み上げるはねこさんの番。もしも自分の投書が読まれれた時トーンがくぐもる様だったら、おしまいにしようと思う。



ラジオはいつも通り、というかいつもより穏やかな内容で進む。視聴者からの投稿をネタにするコーナーでは、いつもと同じ視聴者からの投稿でコーナーが始まる。自分は3つ目で取り上げられた。ねこさんは粛々と進行。投書のネタはあのコンカフェでねこさんに話した事がある内容で、また自分の昔話、ラジオでのねこさんの反応もその時と同じ。

特に何かある感じでもない。前回のラジオとは違う反応。



水曜日の夕方、燎のライブがある日。仕事が夜遅くまで詰まっていてライブに参加は元々無理だったのだけど、急な予定変更でポカンと時間が空く。本当なら手をつけられなかった仕事に着手すべきなのだけど。

ちょっと前、退会し損ねて課金してしまったファンクラブの記事を見たら、ねこさんが写真集のために撮った写真が載っている。出来が良くて、しげしげと眺めてしまう。そしてミュートしていたねこさんのツイートを見てしまう。ライブの動員が厳しい的な2人のSNSの投稿を読んでいて、なおさら気になる。

結局、このまま会社にいるといつも通り仕事をする羽目になるのは明らかで、今日は思い切って仕事を切り上げる。よし、確かめに、燎のライブに行く事にしよう。

今日の朝はまだライブに行く事は想定しておらず、カメラはおろか、タオルすら持ってきていない。まあ、いつも撮影に気を取られるのだから、たまにはステージに集中もいいだろう。今日は全身でまた音を浴びてみよう。

会社を出て下北沢へ。開場まで時間があるので、腹ごしらえに目に留まったバーガーキングへ。たまにはジャンクフードもいいか。

一度2階の窓際の席に座ったけど、なんか眺めが物足りなくて、もう一つ上の階へ。3階はテラス席があり、そこで独り座る。周りには誰もいない。この建物は外のエレベーターからそのまま3階のテラスに入ることができる造りで、たまに入ってくる人がいるのだけど、特段気にならない。

また一人、エレベーターから降りてきた人が。自分はスマホに目線を落としていて気にもしなかったのだけど、こちらまできて、踵を返してまたエレベーターの方へ。

なんだ?と顔を上げる。後ろ姿がほんの一瞬だけ見えた。
黒い服にちょこんと左右を結んだピンクの派手髪。あれ?もしかして果南さん?!

そのライブは果南さんとゆかりの深い方の生誕祭。
声出しが認められる様になって、オタクの勢いは増す一方。自分は流行病の渦中しか知らないのでライブの度に面食らう。けど、いつのまにか自分もその中の1人になっている様な気がしなくもない。

ライブはほぼスケジュール通りに進み、燎の出番。再始動ライブの時にお披露目された衣装に身を包んだねこさんが、続いて果南さんがステージに上がる。

久しぶりと感じるかと思ったけど、いざステージ最前に陣取ると特に時間の経過は感じない。ただ、今日は燎のTシャツじゃなくてスーツ。若干肩の部分が重い。

二人を観客席から見上げる。
ステージが程よく高く、けどねこさんの視野に自分が入っている様子は全く無い。

そして自分は曲に合わせて入れる合いの手を確かめるために他のオタクさんを観察してしまい、ステージに集中できないという状況に。

すぐそばにいるのに、すごく離れている。



動画で合いの手のセオリーを燎の曲に当てはめるとこうか、と、いつの間にか何度も繰り返して観ていた。今日もその先輩オタクさんが来ていて、予習通りの観客席側。

最初は "Andromirror"、続いて "ハレルヤ" というセトリは生誕祭のトリ前という事でアップテンポの曲で勢いをつけてくる流れに見える。ハレルヤのイントロが流れた時、さっと最前列を見る。若いオタクさんと目が合い、来たと目配せ。このオタクさんとは、"ハレルヤ" がくるといつも何故か何かを互いに確認し合ってしまう。

"ハレルヤ" は1stアルバムに入らなかったことで扱われる機会が減るかと思ったけど、ライブでは出番は想定よりもかなり多くて内心ほっとしている。そしてやっぱり好きな曲が来るとアガる。
ゼーゼー息を切らしながら、腕を振り回した。MC中、隣にいる先輩オタクさんと最前で二人で膝をついて休憩。

ライブが終わり、特典会へ。
今日はねこさんと1秒でも話をして、少しでも何かを感じ取ろうと思う。そして果南さんには、さっき出くわしたよね?と確認しよう。

空きっ腹にビールを5杯飲んでいた。酔っているのにどこか張り詰めている、けど呂律は回らない。昔、会社の草野球した後に飲むビールのよう。ねこさんの反応が、なんか用事ですか?的な感じだったらどうしよう、とかぐらぐらする。おいおい。

「ひさしぶりです」と切り出し、話し始める。間が空いた20日間の自分のツイートは見ていたようで、空白の20日間が1分程度の僅かな会話の往復で触れられていく。けど底は曇っている感じがする。そんな凄く微妙な感じ。

酔っ払いで、正直なところまともな話はできてなかった。
以前のような会話になるよう、ねこさんは気を遣っているのが分かる。
そして自分はやっぱりポンコツだった。

ライブハウスに到着する前に、下北沢のごみごみした路地を歩いた。

次のライブは15日、ホワイトデーを過ぎている上に仕事の予定的に参加できるか怪しい。となるとバレンタインデーのお返しは今日渡さないと。元々はねこさんと対面することはもうないのかもと思っていたのもあって、今日のお昼過ぎまでは何も考えていなかった。

どうしようかとぼーっとしながら歩いていると、楽器屋さんが目に入る。
ギターの練習は続けていて、1日1時間近くは触れている。手元にあるギターはとても気に入っているのだけど、他のギターの感触や音も気になっている。ショーウィンドーから見えるお店の奥に、EpiphoneのESみたいなギターが何本か並んでいるのが見えた。

木の色味そのままのやつもあって、ちょっと見てみようとお店に立ち寄る。値札を見る。あー、やっぱり100万円超えてるやん。他にハンガーに吊るされているギターを見ると、濃い茶色というか、黒っぽいサンバーストのアコギが目に留まる。

ねこさんが弾き語りをしている時の姿を思い出す。
ねこさんがギターを抱えている時、いつも目線が行ってしまうのが弦を弾く右手の指先。ねこさんはサムピックという、指でつまんで使う形ではなくて親指に装着する形のピックを使っている。

以前チラッと見て、幅広のサムピックを使う傾向があるのは知っていた。ねこさんにサムピックをいくつか買っていこうか、とピックが売られている場所に。ひとりおっさんがしゃがみ込んで熱心にピックを見ていて、なかなか場所を空けてくれそうにない。

けど、よく見たらサムピックが無い。マス目状に区切られたピックの陳列ケースの端のマスに一つだけあった。選ぶ余地もないのか、とピックをプレゼントするのはやめた。

視線をずらすと、そこにはギターの弦が。エレキギター用やアコースティックギター用、エレキベース用とずらっと並んでいる。そうだ、ギターの弦を買っていこう。

けど、ギターの弦もピックと同じくその人の好みがはっきりと分かれやすくて、好みを知っていないと選ぶのが難しい。しかもねこさんはアコースティックギターもエレキギターも持っていて、同じ弦は使えない。とりあえず、当たりをつけるために一番無難なやつを一つ買って反応を見てみようか。

自分はエレキギターはErnie Ball、アコースティックギターはMartinというブランドの弦を好んでいる。当時あった色々な弦と比べると、弦を弾いた時のハリと高音・低音の豊かさが好みだった。とはいえ、自分が弦の感触を知っているのは30年前の話。多分当時とはどれも別物だろう。

結局、Elixirというブランドのエレキギター弦、太さは一番標準的な10-46というものにする。Elixirは弦にコーティングが施されて劣化しにくいというタイプの先駆者。自分が演奏するのを止めてちょっとした頃に登場したもので、当時は凄く話題になった。自分は実は弾き心地とかよく知らないのだけど。

ねこさんにギターの弦を渡し、ちょろっとギターの話をする。けど酔っ払っていてとっ散らかる。プレゼントというにはあまりにもそっけなく、お店の半透明の袋にポイッといれただけ。

こういうところもだめなんだろうな自分。渡す物は、物のついでじゃなくてちっとはあなたの事を考えてるんですよ的な細工はあるべきだし、ちゃんとねこさんと話をして、どんなギターの弦が好みなのかさりげなく引き出せば良いのに。

そして最近、アルコールに変な頼り方しはじめててまずい。自制しよう。

果南さんとも久しぶりの会話。

「バーガーキングぶりー」

あれ、やっぱり果南さんだっんだ。20日間が空いたのに、数時間ぶりという。本当は、燎の二人がステージに立ったらなんか客席に自分がいる、というシチュエーションはどうだろうと思っていたのだけど、まさかこんな所で種明かしになってしまうとは。完全に計算外だ、やられた。

なんか残念な反面、そうそう起きないこの状況、話のネタとしては面白い。

ねこさんも果南さんと自分が思わぬところで出くわした事を聞いていた様で、ねこさんは「果南さんとの方が話は面白いよね」と。確かにね。

ねこさんと偶然出くわしたのは、去年夏の浴衣撮影会。会場最寄りの駅で降り、改札に向かったらねこさんと出くわした。同じ電車で、自分は前の方に乗り、ねこさんは後ろの方に乗っていたみたい。人の乗り降りが少ない駅なら、出くわすこともあるだろう。偶然というには確率的にはかなり高そうだ。

今回の果南さんとの遭遇は、幾つも偶然が重なった。
普段は食べないハンバーガーを食べようと思ったり、一度座った2階から3階に移ったり。テラス席でプレゼントをどうしようと検索していたのだけど、水曜日で定休日のお店が多くて手こずった。すぐ何か見つかったらそこにはいなかったと思う。

そして果南さんは集合場所のビルをスマホの地図を見ながら来たらしいのだけど、地図が指す場所は間違ってここを指していたらしい。

こういう偶然は、後になっても妙に覚えていたりするかもしれない。ねこさんともこんな偶然あったらいいのに、縁は無いみたい。

結局ねこさん果南さんと無難な話をして終わる。
ここが着地点なんだな。

2023年3月のブランチ (1)

翌日。今度は果南さんが新たな職場で勤務開始。場所は横浜、関内。自分のホームグラウンドではあるけど、その中ではあまり馴染みのない区画。

この日は色々用事があってこなし、最後の締めの用事になった。

果南さんはあまり横浜に馴染みが無いようだ。
せっかくの横浜勤務、何か横浜の印象を残せたらと思う。自分は横浜近辺というと、崎陽軒のシウマイ、大船軒の鯛めし、不二家のショートケーキ、Kitamuraの小物辺りか。

果南さんが出勤したこのお店から、関内駅を挟んで反対側にある伊勢崎モールという商店街にある不二家は、現在の不二家の業態一号店。意外と知られていないので、ちょっとの話のネタにはなる。

しかし時間が時間で、不二家以外に知っている物の入手が難しい。
果南さんは今、体の調整中であまりカロリー高めはよろしく無い。

何度も不二家の前を往復し思案した挙句、果南さんと一緒に働く人の分と合わせてチーズケーキとショートケーキを。果南さんすみません。自分にはこれが精一杯。

果南さんが新たに務めるお店に到着。自分は一人目のお客さん、開店突入状態。気合い入れ過ぎたか。果南さんにケーキの箱を渡す。封を開けるも、分かってるでしょうにー、と叫び。ほんとすみません。

お店は不良メイド喫茶、という謎のコンセプト。店内の照明も黒い壁紙に紫色の照明とか怪しい。なのにキャストさんはなんかのほほんとして不思議な雰囲気。果南さんのメイド服姿は全然違和感がない。着慣れている、というのはどこから醸し出されるのだろう。

壁にはハンガーと共に黒のGretschのギターとRickenbackerのベース。渋い選択、店長の私物だそう。BGMは80年代後半から90年代のハードロック。何と自分ど真ん中な趣味。

しばらくすると顔馴染みがジリジリ集まり始める。燎さんチーム、頑張ってます。

他のキャストさんには現役アイドルさんがいて、しかも自分が行った事があるコンカフェのキャストさんでもあるそう。意外と狭いこの状況、いやはや、悪いことはできませんね。

キャストさんが入れ替わり立ち替わりお客さんに対応しているこの臨機応変感に果南さんも合わせている。さすが。あのコンカフェとも似た業態ゆえ、通じる部分があるのだろう。けど、あのコンカフェでは店長としてバシバシ仕切っていた果南さんが借りてきた猫感を出しているのが面白い。

そんな合間に果南さんと、ねこさんと自分の間のギクシャクした間柄についてちょっとだけ話す。たまに見え隠れする果南さんの表情、果南さんは言葉を選んでいる。

距離感は何となく計れた、気がする。
自分が言っていた事は、共感は無いけど多分業務的に理解はしてもらっている。もしも屈託なく話ができる距離なら出てきそうな「でもね」とか、その後に続く正直ベースの話は出てきそうにない距離感。

そして閉店時間。キャストさんが何も言わずともさっとお客さんがはける。

なんか、まあそうだよね、と言う気持ちが胸にまとわりつく。こんな気持ちも含めて楽しいかも。普通に暮らしていたら感じられない感触、今までに感じた事も無い感触。



ねこさんの曲、”四葉”の耳コピに挑戦しては歌詞に引っ張られて全然コード進行が頭に入らなかったのに、なぜか運指が次のコードへ繋がるようになった。

まだ全部のコードを納得いく状態で拾えていない。add9とか、ごくたまに出てくるdimやらってなんか押さえるの苦手なんだよね。
自分の推測では、ねこさんが作曲した時はギターで主要な部分は作られ、そこに鍵盤でアレンジが加わっている感じがする。更にこれをギターではどう弾くのがいいんだろう。いいコピーと運指の練習になりそうだ。

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