カメラ!カメラ!カメラ!(9)

部活がない水曜日の放課後、下駄箱でばったり会ったのは…
「佐山君!」
尾野さんだった。
「…はい?」
「夏休み前は、お祭りの時は、ごめんね。友達づきあいくだんないとかいろいろ言って…」
「あ…うん。俺もいきなりキレてごめん。」

「私、今、十二歳年上の兄と暮らしてるの。」
帰り道、尾野さんが話してくれた。
「もともと六歳までこっちに住んでて、小学校に上がるときに大阪に引っ越したの。でも、兄だけは東京の大学に進学が決まってたから、実家を受け継ぐ形でこっちに残ったの。」
「で、なんで尾野さんは中学、花八木中に来たの?」
「それは…友だち達が私の取り合いになって…」

『すみれ、うちと同じ中学受験しよう?』
『すみれは公立中に行くんやで』
『すみれ、うちを裏切るつもりなん?うちら親友やろ?』

「私立中学校どこを受験しても公立中学校に行ってもドロドロの友達関係が続いてしまいそうだったから全部切って東京に来たの…なんかもう友達づきあいに疲れちゃって…」
「優しいんだね尾野さんて。」
「え?」
「優しくなかったらそんな風に友達のことで悩んだりしないよ。」
「そうかな。」
「今度はさ花八木中学校で友達いっぱい作りゃいいじゃん。一緒にいて楽しい友達をさ。」
「うん…じゃあ…佐山くん。」
「ん?」
「私と友達になってくれる?」
俺は尾野さんに力強く答えた。
「よろこんで!」

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