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風凪いで(20)

「では、葉奈さんは夫の建児さんのお子さんではなく、援助交際で出来たお子さんなんですね。」
「…はい。」
「それを隠すための結婚だったと。」
「はい。」
「風花さん。大変でしたね。」
「……はい。」
「葉奈さんが教えてくださいましたが凪沙ちゃんも売春していたそうです。」
「…そうですか。」
「この詩を読んでみてください。」

あなたの子どもは/カーリル・ギブラン

あなたの子どもは あなたの子どもではない
子どもは「生命」の渇望からの子どもである

子どもはあなたを通ってくる
しかし あなたからではない

子どもは あなたと共にある
しかし 子どもは あなたのものではない

あなたは 子どもに愛を与えることが出来る
しかし 考えを与えることは出来ない
子どもは 自分の考えを持っているのだから

あなたは 子どもの体を動かしてやれる
しかし 子どもの心は 動かせない

子どもは明日の家に生きている
あなたは それを訪ねることも 見ることも出来ない

あなたは あなたの子どもを思い通りにしようとしてはいけない

人生は 後ろに退き 昨日にとどまるものではないのだから

あなたは弓である

そして あなたの子どもらは
生きた矢としてあなたの手から放たれる
弓ひくあなたの手にこそ 喜びあれ……と

「風花さん。いえ、お母さん。あなたはそれでも葉奈さんにとっても凪沙ちゃんにとってもあなたはお母さんです。」
「でも私は…」
「お母さんです。現にこんなに葉奈さんは風花さんと凪沙ちゃんのためを思って動いてくれたじゃないですか。弓ひく人ですよ。風花さんは。もっと弓ひく人になっていきましょうよ。」

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