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10クラ 第42回 幼少の小箱

10分間のインターネット・ラジオ・クラシック【10クラ】
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第42回 幼少の小箱

2022年9月23日配信

収録曲
♫ヨハン・セバスティアン・バッハ:メヌエット ト長調 BWV114
=『アンナ・マグダレーナの音楽帖』よりペツォールトのメヌエット

オープニング…サティ:ジュ・トゥ・ヴ
エンディング…ラヴェル:『ソナチネ』より 第2楽章「メヌエット」

演奏&MC:深貝理紗子(ピアニスト)


プログラムノート

今回は自分の辿ってきた道筋の原点を見て。
そこに純粋にポカポカとした光に包まれた作品をしまっている。
それはいつでも取り出せる小箱。
決して無くなることもなく
決して減ることもない。

バッハ(その後の研究でペツォールトの作品と解明された)のメヌエットは幼少期に発表会で演奏した作品で、一音一音を見て聴いて練習した記憶が、驚くくらい鮮明に残っている。全ての音に意味があり、全ての音に愛がある。早くもそんな音の汲み取り方を教えてくれた先生には感謝しかない。

以降私はバッハが好きだ。練習も好きだ。というか、鍵盤に触れている時間が幸せそのもので、なにが練習とかいう境目もほとんどなく弾いてきた。もちろん険しい道でもあったから、「腹を据える」という感覚はある。それでも練習は、遥か昔、或いは遥か彼方の先人の遺していった人生の歩みを辿る時間であり、譜面と音色を通して心と心の豊かなコミュニケーションをはかれる幸福極まりない時間である。

「厳しさ」を捉え違えている人がいるように思う。
文化における厳しさは、人間の心を学ぶ幸福に在る。その過程で経験した苦悩も苦痛も、全て音楽、またはもっと広く文化芸術の深い喜びへ通づる道である。
なにか謎めいた「厳しさ」を説く存在がいるならば、それは自己に酔っている。
自己に酔うことは-
作品本来の姿を歪めかねない恐ろしい行為である。

子供たちに伝えたいのは、音楽に限らず、多くのものを見聞きしてほしい、ということだ。
世間の評判も関係なく、ただたくさんを見てほしい。
そのうちに、自分の「大好き」を見つけることもでき、自分の意思を信じることもでき、他人の「大好き」と「意思」を尊重できるようになるはずだから。
どこかが歪んでいると思ったらその時、自分の心に問いてみる。
「自分に酔っているんじゃない?」

クラシック音楽を届け、伝え続けていくことが夢です。これまで頂いたものは人道支援寄付金(ADRA、UNICEF、日本赤十字社)に充てさせて頂きました。今後とも宜しくお願いします。 深貝理紗子 https://risakofukagai-official.jimdofree.com/