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10クラ 第47回 【2周年記念】衝撃音と微音を聴く

10分間のインターネット・ラジオ・クラシック【10クラ】
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第47回 【2周年記念】衝撃音と微音を聴く

2022年12月9日配信

収録曲
♫オリヴィエ・メシアン:『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』より第2曲「星のまなざし」
♫オリヴィエ・メシアン:『8つの前奏曲集』より第7曲「静かな嘆き」

オープニング…サティ:ジュ・トゥ・ヴ
エンディング…ラヴェル:『ソナチネ』より 第2楽章「メヌエット」

演奏&MC:深貝理紗子(ピアニスト)


プログラムノート

 本日で10分間のインターネット・ラジオ・クラシック「10クラ」は2周年を迎えました。毎月第2・4金曜日の月2回ずつお送りして早2年、隙間時間を見つけては聴いてくださり、ご感想もお寄せいただけるなど、細々ながら嬉しく続けております。仕事が立て込めば夜な夜な配信作業を行い、体力的に厳しいこともありましたが、「10クラ」での出会いから演奏会へ足を運んでくださる方もいらっしゃったり、そこから興味を持って作曲家の作品や、関わりある文学作品に触れる機会に繋げてくださったりと、この企画をやってよかったな、と思うことがたくさんありました。本当にありがとうございます。今後とも、細く長くお付き合いいただけましたら幸せです。

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 2周年記念に選んだのは「愛の音楽家」であるオリヴィエ・メシアン(明日12月10日は生誕日)で、「衝撃音」と「微音」の音楽表現に触れてみたい。メシアンというと敬虔な神学者で、神によって成されたもの-自然、鳥、生物-を音楽で表現し、人間的な目線から「愛なる警鐘」を鳴らし続けた人物である。
 今回初めに演奏するのは長大なピアノ作品『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』より第2曲目「星のまなざし」という作品だ。全曲を通じて描かれる「星と十字架のテーマ」が最初に提示される重要な部分である。ここでいう「星」は救い主イエスの誕生、「十字架」はイエスの死を暗示している。冒頭は「星」の生まれ出る衝撃音で、自然界の壮大さ、神による恩寵の凄みを示している。
 続く甘美な作品はメシアンの初期の「静かな嘆き」である。plainteを日本語訳するとなかなかしっくりくるものが無いが、「嘆き」というよりはやや欝々とした内向的表現と受け止めている。歌に溢れ、オルガニストとなるメシアンのフーガ的書法の断片も見受けられる。この作品にはドビュッシーの色彩要素もあれば、ワーグナーの抒情的官能性もあり、スクリャービンの病的な神秘性も垣間見える。「微音」は生活のなかに埋もれる声でもあるかもしれないし、心を研ぎ澄ませなくては決して聴くことの出来ない第6感的存在-或いはそれを「感性」というかもしれない-をも含んでいるのではないだろうか。
 メシアンは自身も偉大な作曲者となったが、先代作曲家の熱心な研究者でもあった。多くのリスペクトの上に成り立った作品は、敬意と愛に満ちていて、それはすべての人間に対し、そしてその先の「万物の創造主」に向かっている。2022年、この偉大な作曲家の没後30年を迎えた。いま、世界は愛に満ちているか。音楽が間違いなく社会へ訴えかける「文化」としての効力を持つことを、オリヴィエ・メシアンは証明し、この世を去った。

クラシック音楽を届け、伝え続けていくことが夢です。これまで頂いたものは人道支援寄付金(ADRA、UNICEF、日本赤十字社)に充てさせて頂きました。今後とも宜しくお願いします。 深貝理紗子 https://risakofukagai-official.jimdofree.com/