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2024.8.4 宇多田ヒカル Science Fiction Tour@代々木国立競技場第一体育館

 先日、デビュー25周年を記念したベスト盤、"Science Fiction"を引っ提げてのツアーの全日程が終了した。

 私は、2018年に行われた前回のツアー"Laughter In The Dark"に続いて2度目の参加となった。

 前回は幕張メッセでの参加だったが、最も後方のエリアで、実物の宇多田は豆粒のような小ささでしか視認できず、ほとんどステージ脇のモニターに映し出される姿ばかりを見る羽目になった。

 それに対して、代々木国立競技場第一体育館での参加となった今回は、前から9列目という絶好のポジションで驚いた。目を凝らすまでもなく、バンドメンバーを含めた演者達の表情や、細かい動きまで鮮明に見ることができた。

 妻と2人で行ったのだが、音楽の趣味は全く共通していないので、普段一緒にライブに行くことなど滅多に無い。宇多田の音楽は、様々な異なる価値観を持つ人同士でも共感し得るコンテンツなのだと思う。


◾️セットリスト内訳
 1st『First Love』・・・4曲
 2nd『Distance』・・・3曲
 3rd『Deep Rever』・・・3曲
 4th『Ultra Blue』・・・3曲
 5th『Heart Station』・・・3曲
 6th『Fantôme』・・・1曲
 7th『初恋』・・・1曲
 8th『BADモード』・・・3曲
 最新シングル・・・2曲

 アンコールを含めて全23曲を披露。そのうち、2010年の活動休止以前の初期の楽曲が16曲を占めた。

 前回のツアーでは、6thと7thが中心のセットリストだったこともあってか、今回はその2枚からの選曲は抑えてきた。また、前回のツアーでは唯一2ndからは選曲無しだったが、今回は初期5枚から満遍なくチョイスし、キャリア全体を網羅してきた。

 また、全23曲中9曲が"Science Fiction"未収録曲ということで、意表を突いた選曲でも楽しませてくれた。


◾️セットリスト構成
 前半(1〜15曲目)…初期の楽曲(5thまで)
  <休憩>
 後半(16〜21曲目)…最近の楽曲(6th以降)
  <本編終了>
 アンコール・・・新旧の楽曲を各1曲ずつ

 宇多田本人は「前半」「後半」という言い方をしていたが、明らかに前半の方がボリューミーで、スタートから休憩無しで一気に初期の15曲を歌い上げた。

 25年の軌跡を振り返っていくかのような構成となっており、前後半で明確に時期を分けていたのも印象的だった。


◾️前半
 1曲目は『time will tell』。予想外の選曲に盛り上がる。前回のツアーが『あなた』で幕を開けたのもそうだったが、いつも冒頭には穏やかでゆったりとしたテンポの曲を持ってくるのが宇多田流なのか。

 続いて、『Letters』、『Wait & See 〜リスク〜』、『In My Room』と、冒頭4曲の時点で既にベスト盤未収録の曲が3曲と、全く予想のつかないセトリで驚きの連続。特に『Wait & See』のロックなアレンジが格好良かった。

 その後は『』や『First Love』など定番の曲を中心に、時折『For You』や『ぼくはくま』など意外な曲も織り交ぜながら展開。

 個人的に前半のハイライトだったのが『誰かの願いが叶うころ』。元々良い曲だとは思っていたが、ライブでこそ真髄を発揮する曲なのだと思わされる、圧倒的な歌唱だった。


◾️後半
 最新作の表題曲『BADモード』で後半戦をスタートさせると、『あなた』『花束を君に』と、宇多田の息子や母について書かれた、特に思い入れの深いであろう楽曲を披露。宇多田の人生を濃縮したかのようなセットリストだと感じた。

 後半のハイライトは『One Last Kiss』と『君に夢中』。サウンドメイクが他の曲とは明らかに異質で、尖りまくりのクラブサウンドを展開。比較的落ち着いた雰囲気の客層が多い宇多田のライブにおいては、特に『One Last Kiss』の低音の音圧が凄まじく、イカつい尖りっぷりに若干客が置いてけぼりになってる感すらあった。その点、『君に夢中』はその辺りのバランス感覚も良く、圧倒的なスケールと美麗なサウンドで魅了してくれた。

 以前から宇多田本人も「いつかフジロックに出てみたい」と公言しているが、ロックフェスの雰囲気においては、『BADモード』収録曲のサウンドはより一層輝くであろうことを確信した。


◾️アンコール
 アンコール1曲目は新曲『Electricity』。 この曲もFloating Pointsとの共同プロデュース。アンコールで『Somewhere Near Marseilles』に期待する気持ちもあったが、ライブであの尺はさすがにやらないか、と思い直す。この曲が聴けただけでも満足。

 「次で最後の曲」と宣言し、ステージが暗転する。そして、『Automatic』のイントロの音が鳴らされると同時に再び照明がつくと、そこには"あのソファ"に座る宇多田の姿が。ただ、その後は普通に歌っていたのでソファに居たのは一瞬。憎い演出だった。


◾️MC
 25周年記念のベスト盤を出すことが決まった際、『だったらツアーをやりたい』と自ら申し出たそうだが、自らツアーをやりたいと申し出たのは今までで初めてだったという。

 自身の25周年を祝ってほしいのではなく、これまで共に歩んでくれたファンと一緒に、この25年間を、良かったことも悪かったことも含めて振り返り、そして一緒に祝いたくてこのツアーを開催したのだと、宇多田は心境を語ってくれた。


◾️セットリスト

01. time will tell
02. Letters
03. Wait & See 〜リスク〜
04. In My Room
05. 光
06. For You
07. DISTANCE
08. traveling
09. First Love
10. Beautiful World
11. COLORS
12. ぼくはくま
13. Keep Tryin'
14. Kiss & Cry
15. 誰かの願いが叶うころ

<休憩>

16. BADモード
17. あなた
18. 花束を君に
19. 何色でもない花
20. One Last Kiss
21. 君に夢中

<アンコール>

22. Electricity
23. Automatic



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