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レビュー Clairo "Sling"

 アメリカの女性SSW、Clairo(クレイロ)の2ndアルバム『Sling』について紹介していきます。

【収録曲】★はシングル曲
1. Bambi
2. Amoeba
3. Partridge
4. Zinnias
5. Blouse★
6. Wade
7. Harbor
8. Just For Today
9. Joanie
10. Reaper
11. Little Changes
12. Management

■フォーキーで、ミニマルで、温もりを感じられる大人なサウンド

 インディー系女性SSWの新鋭が次々と現れる昨今のシーンにおいて、頭一つ抜き出た感のある彼女。

 2018年のデビューEP『diary 001』を制作した当時は若干19歳。"ベッドルームポップ"と称される、DIY感溢れる楽曲やMVが話題を呼んだ。ラッパーのRejjie Snowや、エレクトロポップのプロデューサーDanny L Harleをフィーチャーするなど、煌びやかな要素が詰まった内容。

 2019年リリースの1stフルアルバム『Immunity』では、元Vampire WeekendのRostamをプロデューサーとして迎え、パーソナルな質感はそのままに、より洗練されたインディーポップ/シンセポップとして進化を遂げた。

 それから2年の時を経て、今回の2ndフルアルバム『Sling』のリリースに至る。

 いま引っ張りだこの売れっ子プロデューサーJack Antonoffを迎えて制作された本作は、前作までのサウンドとは打って変わって、フォーキーで、ミニマルで、温もりを感じられる大人なサウンドとなっており、ソングライティングの面においてもまた一段と進化を遂げたことを証明する一枚に仕上がっている。

 ほとんどの曲はピアノやアコースティックギターが中心で、そこにスパイス程度に添えられた管楽器の音色が心地いい。

 カラフルな音色、キャッチーさは減退したものの、モノトーンな音像でも何度も聴き込めるような味わい深い作品となっており、ビルボード・アルバムチャートでも過去最高の初登場17位を記録するなど、むしろこの方向性が多くの音楽ファンから歓迎されている。

■歌とハーモニーが主役の全12曲

 本作は、秀逸なソングライティングが光る#1 Bambiで幕を開ける。フォーキーな中に、要所に管楽器を取り込んだサウンドが非常に心地よい。歌とハーモニーが主役の、本作の真骨頂とも言える楽曲。

 #2 Amoebaは本作で唯一、前作までのカラフルさ、キャッチーさが踏襲された楽曲といえるかもしれない。心地いいビートに乗せて展開するポップナンバー。

 ミニマルながらも存在感のあるドラミングとベースフレーズが特徴の#3 Partridge、軽快なリズムが印象的なフォークロックナンバー#4 Zinniasと、良質な楽曲が続く。

 そして、本作を象徴するのが#5 Blouse。フォーキーな中に、ほんの味付け程度のオーケストラアレンジが光る、歌が主役の名曲だだ。なおこの楽曲にはバックボーカルとして、全米・全英を制覇した若き女性SSW、Lordeを迎えている。

 その後は、普遍的なグッドメロディの#6 Wade、ドラマチックに展開する#7 Harborと、ピアノを主体とした2曲が続く。

 ピアノの次はギターが主体。静かなオーケストラとともに展開する普遍的メロディと美しいハーモニーが心地いい#8 Just For Today

 ロック要素も含むポップな前半から、ドリーミーな後半へと展開するインスト曲#9 Joanie

 ラスト3曲も非常にミニマル。
 印象的なベースラインに乗せて展開するフォーキーなナンバー、#10 Reaper。クラシカルな音色のピアノが心地いい、#11 Little Changes。そして最後は、オーケストラとともに展開する、ポップかつドラマチックな#12 Managementで幕を閉じる。

 いずれも、あくまで主役は歌と美しいハーモニー。それを際立たせるために必要最小限に留められた、完璧なサウンドプロダクションは見事。長く愛聴できそうな一枚。

#音楽  #レビュー #Clairo #Sling
#インディーポップ  #ベッドルームポップ

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