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声楽家はマイペース?

声楽家はマイペース?

妻は自宅でピアノを教えています。前に書いたかもしれませんが、伴奏が得意、というか好きなこともあって、知り合いの器楽奏者や声楽家から、よく演奏会にかり出されます。

さまざまな演奏者とのエピソードを聞かされるのですが、前に、内田光子さんがテノール歌手ボストリッジ氏(シューベルトの歌曲の録音をした時の話)のことを「リハでうまくいっても、本番では全く違うのよ。まったく何をしでかすかわからないんだから(※そこがスリリング、と内田さんはいいたかったのだと私は思っています)」と言っていたという話をしたら、彼女は即座にその意見に同調し、

「そうそう、声楽系と組むのは大変。器楽奏者との演奏の方が安心ね。」

というのです。発表会をジョイントしている友人のピアノの先生も同意見で、マイペースな演奏者は圧倒的に声楽家が多いというのです。

不思議なので思わず問いました。
「そんなもんかな~。なんで、そう感じるの?」

「まず、プログラムを演奏会ギリギリまで決めないの」

ピアノを弾く立場としては一刻も早く練習したい。しかし、プログラムが決まらないと楽譜の手配もできなければ練習もできない、これは当然ですね。

「それと本番まぎわにプログラムをよく変更するのよね~。ひどいときは当日変更」

当日の調子と気分(?)でだろうか。まあ、気持がわからんでもないが…。

リハーサルと本番でも演奏方針が一貫しない

「それと、リハーサルでも、演奏でも首尾一貫していないの。例えば、テンポ。間の取り方。毎回何が起こるか気が気ではないんだから」

まあ、すべての声楽家がマイペースではないでしょうが…。

器楽奏者の場合は比較的スムーズに

「その点、ヴァイオリンや、フルート、ファゴットなど器楽の人は、スムースに準備できるし、本番でもリハとそう変わることはないのよね」

楽器奏者は楽器を操ります。いくら慣れた楽器であっても音楽を奏でるとなれば、決して簡単に操れるわけではないから、一所懸命練習します。なかなかうまく演奏できません。だからまた練習する。常に楽器と対話しながら演奏するようなものでしょう。パートナーの気持をよく理解できるのかも

声楽家は自身が楽器。なにせ自分が楽器ですから、かなり自由にコントロールできそうです。自分の歌える歌はすべてプログラム候補ですから、ギリギリまで決めなくても問題はない。テンポや間なども思うまま。

声楽家の弁護をさせてもらえば

当然ですが声楽家が一人で、つまり声だけで演奏するということはめったになく、伴奏者というパートナーが必要です。そうそう身勝手にふるまえるわけではありません。が、相手に対する配慮度合いは、器楽奏者とはかなり感覚が違うかもしれません。

ただ、声楽側の弁護をしておきますと(私は昔合唱団で歌っていたことがあるだけで声楽家ではありませんが…)、自分という楽器のコントロールは、それはそれで決して容易ではありません。コンディションの善し悪しにより声も変わりますし、昨日出た高音や低音が今日も同じように出るわけではありません。

歌えるレパートリーも、「歌いこなせる」までなるには相当練習が必要です。練習しすぎると声は荒れてしまいます。伴奏者を引きずり回すこともあるけど、逆に伴奏者にひきずり回されることだってあります

人生色々、演奏家もいろいろ

妻の共演パートナーは、プロもいればセミプロ、アマチュアもいますし、演奏会もリサイタルもあれば、少人数向け気楽なコンサートもある。たまたま彼女が交流した演奏者が、そうであったというだけで、一概にマイペースなのは声楽家に多いとも言えないでしょう。マイペースな楽器奏者もいますしね。マイペース度合いが高すぎて、いろいろし放題のピアニストもいます(笑)。

人生色々、演奏家もいろいろ。かくも個性的な人と一緒に演奏できるのは醍醐味かもしれません。うらやましいですね

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