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父とラーメン

父はラーメンが好物

父の好物はラーメンだった。
昭和40年代。ラーメンといえば、今風にいう醤油味、細麺。食堂で出される普通のラーメンだ。

オヤジは、ラーメンをラーメン店で食べてはいない。
家で母親(つまりオヤジの妻)が作るラーメンを好んで食べていたのだ。…と思うよ、私子供だったのでよく知りませんが(^_^)

夕食がラーメンの頻度が高かったのは、たぶんオヤジの好みに合わせていたのだろう。兄や私育ち育ち盛りの息子達には、野菜たっぷり味噌ラーメンを3〜5杯もふるまいながら、母はさりげなく父用に野菜が少ない味噌ラーメンを出していた。

私の親父は、母の作るラーメンが好物だったのだ。
ラーメン屋でもないし、特別な素材もない。惣菜やを営んでいたので、それなりの食材は仕入れいていただろう。けど、ごく普通の食材で、スープの出汁をとり、メンマやチャーシューをトッピングして作った醤油ラーメンは、いま考えるとこの上ないご馳走だったと思う。父はそのシンプルなラーメンを愛した。

父の晩年、ラーメン店で一緒にラーメンを食べた。
当時もさまざまな味やトッピングで、ラーメンは進化していた。
しかし、父は言った。
「これもたいして旨くないな。家のラーメンが一番うまい」

当時既に母も自宅でラーメンを作ることはなく、兄嫁が作っていた。父は、兄嫁が作る普通のラーメンが好きだった。それは母の作るラーメンと似ていた。


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