見出し画像

第2週「運命のかぐや姫」#くるみ割り人形「花のワルツ」


NHK連続テレビ小説「エール」第2週8話に登場した曲です。
【音が双浦環の歌声に感激】

音の姉、吟の14歳の誕生日、家族団欒の夜、音の父と母によるダンスを子供達がせがみます。子供達が歌う「花のワルツ」のメロディーに合わせて踊る夫婦と子供たち。幸せなシーンが印象的です。こんな日がずっと続くと思っていましたが、運命は過酷です。それを知ってからまたドラマを見直すと切ないですね。


1892年3月、ロシア音楽協会から、新作を入れた演奏会の依頼を受けたチャイコフスキーが、作曲中のバレエ曲から選び、楽器編成も変えて演奏会用に編曲したのが、「バレエ組曲くるみ割り人形」です。
通常組曲は、すでに出来上がっている本編から、数曲を選ぶのがオーソドックスですが、本編より先に組曲が演奏されるのは、非常に珍しいケースです。
初演は、ロシアのサンクトペテルブルグで作曲者自身の指揮で行われました。

組曲は8曲。
1. 小序曲:おとぎ話の幕開け!無邪気な子供の気まぐれな様子を表しています。
2. 行進曲:クルスマスに子供にプレゼントが配られる場面の曲。ウキウキした気分を表しています。
3. 金平糖の精の踊り:女王ドラジェの精の舞。チェレスタの可愛い音色が印象的な曲
4. トレパック:ロシアの農民の力強い踊り。主人公クララの歓迎パーティの曲。
5. アラビアの踊り:コーヒーの精の踊り。夢見るような東洋の気分を表現。
6. 中国の踊り:お茶の精のおどけた可愛らしい踊りの曲。
7. 葦笛の踊り:フランスの踊り。羊飼いがおもちゃの笛を吹いて踊る曲。
8. 花のワルツ:ドラジェの精の侍女達が一斉に踊るワルツ。華やかに終曲します。(ドラマで使われたのは「花のワルツ」ですね)

この曲は、緻密な構成力と流麗なメロディで人気なだけでなく、当時のロシアでは珍しいチェレスタ(*1)を使用したり、弦楽器のハーモニクス(*2)やフルートのトレモロ奏法(*3)を用いたりするなど、オーケストラ音楽の可能性を広げました。世界の国々を思い浮かべながら、オーケストラの音色に耳を傾けるだけでも、すごく楽しい組曲です。
ちなみに本編は、ホフマンの童話「くるみ割り人形とねずみの王様」を原作に、2幕3場のバレエになっています。

ここで豆知識!バレエ音楽くるみ割り人形の作曲はどう依頼されたでしょう?
答えは、「明るいクリスマス・ツリーがキラキラと光っているもの80小節」、「子供達の登場、騒がしいもの24小節」というように細かく依頼されたんです。なかなか難しい注文ですが、それを完璧に答えてしまうチャイコフスキーは、やはり凄い作曲家だなと思います。
興味が湧いてきたら、組曲全曲を、そしてクリスマスには、是非バレエを観に行ってみてください。

ミュージックソムリエ:藤井 憲治(指揮者/アートプロデューサー)

(*1)小型のアップライトピアノのような形態で、鍵盤楽器の一つ。ピアノよりも音域は狭く主に5オクターヴで特に高音を担当する。
(*2)楽器に含まれる倍音を用いて演奏する方法でフラジオレット奏法とも呼ばれる。透明感のある柔らかく澄んだ音になるのが特徴です。
(*3)2つの高さの音を交互に小刻みに演奏する技法


NHK連続テレビ小説「エール」                  (NHK総合月〜金 朝8:00〜8:15、12:45〜13:00、土曜日は1週間を振り返ります。その他NHK BSプレミアム、NHK BS4Kでもオンエア中です。    
*放送予定 3月30日〜9月26日
またNHKオンデマンドでも見逃し放送をご覧になることができます。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?