【ドラゴンのエッセイ】このルール、どうなんだろう?

 今回は、今月ラストのエッセイである。なので読者のみなさんの意見をいただきたい。テーマは「納得のいかないルール」だ。

 俺のような障がい者が通う施設には、あるルールがある。正式には「提供拒否の禁止」というもので、「正当な理由なく福祉サービスの提供を拒否してはならない」と法律に書かれている。俺が疑問に思うのはこのルールだ。
 ここでいう「正当な理由」とは例えば事業所の定員がいっぱいだとか、そもそも募集している分類ではない障がい者が来た場合(知的障がいのみを対象としているのに、身体障がい者が来たり)を指す。
 つまりこれ以外の場合には、施設側は原則受け入れを拒否することができないのだ。
 最初に断っておくと、このルールが必要だというのも理解はできる。両親が共働きで障がい者の子どもを家に1人で置いておかざるを得ないような状況なら、その家庭は一刻も早く子どもを施設に入れたいと思うだろう。そういう時、法律で上記のことが明文化されていればプラスの材料にはなる。
 ただ、俺の場合はこのルールがとても嫌だ。
 俺のケースだとまずは「身体障がい者受け入れ可能」と書いてあるところに見学なり体験なりに行くわけだが、施設側は俺が体験にきた時点で拒否する権利を失う。体験を受け入れたということは、定員にまだ余裕があるということだからだ。
 ここでみなさんには、車いすが施設の想定より場所を取ったり、俺の作業能力が極端に低かったりした場合を考えてみてほしい。
 今まで車いす利用者を受け入れたことのない施設は、そもそも車いすが施設内を動き回ることを想定していない。車いす利用者のためにバリアフリーにはしていても、通路が狭かったりする。そういう施設ではまず「この人、受け入れたくないね」という結論になる。
 しかし何度も言うように、こちらが利用を希望する以上、施設側に拒否権はない。「うちで受け入れるのは難しいですね」とは言えないのだ。でも、受け入れたくはない。じゃあどうするのか?
 答えは簡単だ。強引な手段に出る。俺が体験した例で言うと、週3日は通えると約束していたのにもかかわらず、契約直前になって「やっぱり週2日しか無理です」と言ったり、送迎を施設で行うと言っていたのに「やっぱり無理でした。送迎はできません。それでもよければどうぞ」というようなこともあった。
 作業中も「あなたにはできる作業がないよねぇ」や「よくそんなんで就労支援に通おうだなんて思ったね」とため息まじりに言われたりする。それも施設長が。こっちからは断れないから、利用者側に自分の意思で諦めてもらおうという魂胆だろう。
 俺が見学や体験に行って、通うのを断念した施設はみんなそういう対応だった。以前の記事で「新しい施設に行こうとするとメンタルがボロボロになってしまう」と書いたのにはこういう原因がある。

 俺のような思いをしている障がい者は、他にもたくさんいると思う。俺のように麻痺がある人はもちろん、視覚や聴覚に障がいがある人も似たような扱いを受けた経験があるという人は少なからずいるだろう。
 そこで、「利用を拒否してはいけない」というルールがなかった場合を想像してみてほしい。車いす利用者を受け入れたことがないのでうちでは難しいです、と見学の時に言ってくれれば、俺は心に余計な傷を負わなくて済む。また、理解のない相談員から「向こうは受け入れると言ってるんだから、どんな条件でも行けばいいでしょう。引きこもってるのはよくないよ」などと言われなくてもいい。そんなの俺だって分かってるし、好きで引きこもっている人間なんていないと思う。
 仮に、前述のような施設に無理をして通ったとしよう。契約したらしたで「正当な理由なく施設側から契約を解除してはならない」という法律もある。だから徹底的に追い出しにかかる。今度は家族や相談員さんの目がない分、いじめは一層過激なものになる。そして最後には立ち直れないくらい精神をボロボロにされて辞める。そんな調子だから新しい施設に通おうと思ってもすぐには具体的な話が進められない。そうなると時間はあっという間に過ぎていってしまう。
 これでは悪循環ではないだろうか? そして、障がい者にも施設側にも、最終的にはメリットがない。
 以上のことから俺は、施設側から無条件に拒否権を奪うのはどうかと思うのである。法律の文章では「貧富の差などを理由に」という但し書きがついている。差別を無くそうという意志の表れなのは理解できるが「施設側の能力的に受け入れられない」ものに関しては断ってくれた方が双方にとっていいと思う。
 しかし、拒否権を認めてしまうと今度は、何でもかんでも拒否するような施設が出てくるかもしれない。難しいところだ。

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