【ドラゴンのエッセイ】ドラゴン流恋愛論① 告白まで

 今回からしばらくは、肢体不自由であるこの俺が恋愛についてどのように考えているか? というテーマで書いていく。健常者の方々にも参考にしてもらえる内容もあるかもしれないので、「自分には関係ない」とは考えずにたくさんの方に読んでほしい。
 これから書く内容の多くは男性からの視点である。女性には「こんなふうに考える男もいるんだなぁ」くらいの軽い気持ちで読んでほしい。

俺にとっての恋愛

 俺にとっての恋愛をひと言で表すなら、別世界の話である。一生縁のない話と言い換えてもいい。
 では、なぜ俺がそんな考え方になったかというと、相手を思いやった結果である。
 肢体不自由という障がいを抱えながら生きてきた俺は、世間の暖かさも冷たさも充分すぎるほど知っている。世間は冷たい。暖かい視線や言葉をいただける時もなくはないが、極めてレアケースだ。
 読者の皆さんも想像してみてほしい。学校や職場でのいじめの代表格とされる「言葉の暴力」を、外出するたびに受けるという状況を。恐ろしいもので、生まれた瞬間からそういう環境に置かれると人は慣れていく。現に俺は、ショッピングモールですれ違った見知らぬおじさんに「税金泥棒」やら「不倫の果ての子」やら言われてももはや感情が動かない。もちろんいい気持ちはしないが、怒りをぶつけたいとも思わない。そんなことをしても面倒くさいだけだと知っているからだ。
 ただ、それはその言葉の暴力が自分、もしくは自分と親だけに向けられているものだからである。他人を巻き込むとなると、話は全然違ってくる。

 例えば、彼女が俺の車いすを押してくれているとしよう。そうすると心ない言葉が聞こえてくる。
障がい者と付き合うだなんて、キモい女がいたものだ
 もちろん俺たちは、お互いのことを好きになったから付き合うという決断をしたのだ。そこに障がい者だとか健常者だとかいう区別は関係ない。少なくとも俺はそう信じる。
 だが、世間の多くの人間はそうではない。障がい者と健常者が交際ないし結婚をするなんて言い出したら、これは立派なゴシップになってしまうのだ。芸能人の不倫問題のように、多くの人の好奇の目に晒されてしまう。
 ネガティブに考えすぎだよ、と言ってくれる人もいるかもしれない。しかし、前述のキモい女発言のくだりは実話である。体験したのは俺ではなく後輩だが、自分も相手もなんともいえない気持ちになってしまった、と話してくれた。
 こういう話は一つや二つではない。そこで俺の出した結論は、恋人なんて作るべきじゃないというものだった。

それでも

 俺だって普通の男だ。綺麗な女性を見かければ目で追ってしまうし、優しくされようものならキュンとする。「普通の男」という表現は少し違うかもしれない。俺は、チョロいやつの部類だろう。
 だからこれまで何度かは恋をしたことがある。一度として報われたことはないが、、それでいいと思えるようになってきた。要は、好きになれただけで満足なのである。

相手に認識してもらう

 恋愛についてこんな価値観を持っている俺。それなのに、なぜかよく恋愛相談を受ける。学生時代は先輩後輩を問わず相談されたし、女性の先生から「彼がなかなかプロポーズしてくれないんだけどどうしたらいいだろう?」という難しい相談を受けたこともある。俺がその先生に対してどのようなアドバイスをしたかについては、また別の機会に。
 今回は交際の前段階。つまり「どうやって相手に自分を意識させるか」という問題からいこう。実はこの手のやつもよく相談された内容である。
 もう一度断っておくが、俺にまともな恋愛経験はない。あるのはたくさんの片想いの経験だけだ。それでも俺の意見を参考にしたいという方が俺の友人知人にたくさんいらっしゃったので、彼らにしてきたアドバイスをここに書く。皆さんの参考になるかは、正直言って分からない。

「誰かを好きになる」とか「愛する」という感情は、性別を問わず誰もが一度は抱くものだと思う。それは理性のブレーキが効くものではないし、感情自体にはブレーキをかける必要はないと思う。
 ブレーキをかけたり、時にはアクセル全開にしたりという塩梅が必要になるのは「行動」である。例えば(恋愛感情とは少し違うけれど)、推しが脱退や引退をしたから自分も仕事を辞める、というのは間違っていると思う。もちろん気持ちは痛いほど分かる。それでもその行動は、間違っている。
 この理屈は恋愛においても同じだ。好きな人が近くにいるからといって、いきなり告白してしまったのでは相手に気味悪がられてしまう。まずは直接的なアクションは避けるべきだ。
 つまり、いきなり不自然に近寄るなということである。好意云々の前に、モブキャラからの脱出を図らなければいけない。モブキャラがいきなり告白したり、連絡先を聞いたりしようものなら引かれること間違いなしだ。まずは自分がどのような人物であるかを相手に認識してもらうこと。すべてはそこから始まる。

 例えば、コンビニの店員さんが好きな人だったとする。いきなり連絡先を交換しようとしたり、レジ前で自己紹介したりという行為は不自然極まりない。
 ではどうすればいいのか。これは一例だが、まずはその店員さんのおすすめの商品を尋ねてみる、というのがいいと思う。もちろん尋ねるだけではなく、実際にそれを買うわけだ。すると次回行った時、「あなたが勧めてくれたお弁当美味しかったです!」というように会話の糸口が作れる。そうすると今度は、別の会話が生まれる可能性がある。また別のお弁当を勧めてくれるかもしれないし、今度はデザートかも。もしかしたら雑談を振ってくれる可能性だってある。

行動を起こす

 そこまで漕ぎ着けたらあとは連絡先を聞く段階にいけばいい。ただ、ここで確認しなければいけないことが1つある。相手に嫌われていないかどうかだ。雑談を交わすような間柄にまでなれたとしても、嫌われている可能性はある。嫌われている、という言い方は少し違うかもしれない。「お客さんだから雑談くらいはしてやるか」くらいの温度感でいる可能性も視野に入れたほうがいい、という話だ。
「お客さんだから」という雰囲気が少しでも感じ取れた場合は、絶対に連絡先を聞くなどの直接的な行動をとるべきではない。モブキャラ時と同じ結末を辿る可能性が高い。その場合は、一旦距離を置いてもう一度トライするのがおすすめだ。
 今までずっと近い距離感でいた人からいきなり距離を置かれたら、あなたならどう思うだろうか。どんな形であれ、相手のことを考えるはずだ。苦手な人だったら「離れてくれてよかった」、好きな人だったら「なんでいきなり?」と不安に思うだろう。そのような微妙なニュアンスを感じ取ることが重要だ。
 もし一定期間距離を置いてみて「離れてくれてよかった」という雰囲気を感じたのならもう可能性はゼロだ。潔く諦めた方がいいだろう。

告白

 さて、ここからは「運よく連絡先を交換できた」という前提で話を進める。
 友人としての付き合いをスタートさせ、ある程度時間が経った。相手も、2人きりで会うことに抵抗がないらしい。ここまでの確信が持てたら、やっと告白のタイミングだと思う。

 俺の持論だが、告白というのは気持ちでするものである。莫大なお金も、手の込んだサプライズも必要ない。きちんと顔を見て、好きだと伝える。これだけで十分だと思う。というわけで、メールやLINEでの告白は(やむを得ない場合を除き)避けた方がいいだろう。顔を見た方が、気持ちは確実に伝わる。
 お金をかけてプレゼントを買ったり、夜景が綺麗なレストランでサプライズしたりというのは二の次でいい。まずは相手の笑顔を想像することから始めよう。どんな告白をすれば相手は喜んでくれるか考える。すべてはそれからだ。
 もしここで、どうすれば相手が喜ぶかなんて分かるかい! と思った人は、告白を延期しよう。まずはそれを想像できるようになることだ。

 次に意識することは、派手になりすぎないこと。まだ付き合うための告白の段階なので、そこまで大げさにする必要もない。カップルにとって最大のビッグイベントはプロポーズだ。告白に気合いを入れすぎてプロポーズが霞んでしまうようなことはあってはならない。先程、サプライズやプレゼントは二の次でいいと書いたが、そういうことはプロポーズの時まで取っておいた方がいい、という意味でもある。
 簡単に言うと、告白は一瞬の思い出でいい。心から相手のことを大好きだという気持ちがあるなら、それを伝えるだけで結果はどうあれ告白にはなるからだ。告白する時には絶対の自信を持つべきだと思うが、万が一振られた場合でも大げさにしなければ傷は浅くて済む。極端な話、告白のためのプレゼントを用意すると振られた場合のダメージが精神面と金銭面のダブルパンチになる。
 今の時代、「友だちはいいけど恋人同士になるのは嫌」という人は一定数存在する。そういう人の気持ちを動かすのは、とても難しいだろう。だからこそ告白は「全身全霊で、日常の中で」するべきと俺は考える。その方が相手のためにもなる。告白はそれなりのビッグイベントなだけに、反動も大きいということも頭の片隅に置いておきたい。

 ここまで、一人前の男のフリして恋愛について語ってきた。ちなみに今まで俺が告白出来た女性は5人。結果はもちろん全敗である。
 しかし、これまで俺に相談を持ちかけた女性は例外なく俺のアドバイスの直後に自分なりの幸せを掴んでいる。それは事実だ(その結果俺が振られたということもあった)。
 こんな俺の妄言が参考になると言ってくれる人がいてくれたならとても嬉しい。ただし、あくまで俺個人の意見だということは忘れずにいてほしい。恋愛をするのは俺ではなく、これを読んだあなただ。最後は自分の信じた道を行くこと。これが恋愛について断言できる唯一の攻略法かもしれない。
 ここまで読んで頂きありがとうございました!

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