【ある障がい者の経験談】親友Nさんと、歌

 俺の記事は、エッセイがたくさん読まれている。特に閲覧数が多いのはやはり、親友Nさんのことを書いた記事だ。あるフォロワーさんにはっきりと言われたので書いてしまうと「施設のスタッフだった人が利用者だった人と友だちになるなんて」ということらしい。非難しているわけではなく、純粋に興味があるのだとか。そして俺も、そういう方もいるだろうなぁと理解はできる。
 というわけで今回は、Nさんについて語っていこうと思う。

 まず最初に言っておこう。俺はNさんの親友であり、彼女もそれを認めてくれているが、俺は親友である前に彼女のファンでもある。親友歴とファン歴だったら、間違いなくファン歴の方が長い。
 ここで今回のもうひとつのメインテーマ「歌」の登場だ。俺にとって歌や音楽がどういう存在かは別記事で書くとして、Nさんはとんでもなく歌が上手い。距離を縮めるきっかけになったのも、歌だった。

 5年ほど前、2人が在籍していた施設Bにカラオケマシンが導入された。作業終了後に楽しむためだ。俺も歌が好きだったから惹かれたが、作業終了後まで施設に残るというのに抵抗があって遠慮していた。
 その頃からちらほらと「Nさんの歌はとんでもない」という噂が立ち始めた。とは言っても所詮噂は噂。残ってまで自分の耳で確かめたいという気持ちにはならなかった。
 しかしある時、俺の心が動いた。幼なじみであるYくんが「相棒とNさんが一緒に歌ってるの聴きたい!」と言ったのだ。どうせNさんに拒否られるだろうと思ったが、彼女も乗り気だった。そして初めて2人で歌ったのがKinKi Kidsの「ボクの背中には羽根がある」。今でも鮮明に覚えている。彼女に剛くんのパートを任せ、第一声を聴いた瞬間に「ああ、この人には絶対に叶わない」と思った。Nさんの声は透き通っていて、適度に湿度のある感情を揺さぶる声だった。感動しすぎて俺が歌うパートを忘れそうになるほどだった。それからというもの、彼女の歌を聴くために作業後に残るようになった(もちろん俺も歌うが)。
 後日聞いた話だが、彼女はあの日まで誰かと歌うのが苦手だったらしい。手が震えるほど緊張していたという。「でもドラゴンくんも歌が上手だから、一緒に歌えて楽しかった」と言ってくれた。俺が彼女のファンになったのは、その日からだ。

 そして友人になり、一緒にカラオケに行くようになると、俺と彼女の音楽の好みが近しいことに気づいた。具体的に「こんな感じのやつ」と言い切ることは難しいが、2人とも最近の曲より往年のヒット曲が好きなのである。
 さらに彼女のすごいところは、俺のリクエストをしっかりと受け取ってくれるところだ。最初にリクエストしたのは赤西仁くんの「ムラサキ」だったと思う。もちろん俺も向こうのリクエストには応えるわけだが、彼女の新しい曲を覚えるスピードは尋常じゃない。俺の方が時間はたくさんあるはずなのに。そういうところは尊敬するし、俺のリクエストを聞いてくれて感謝もしている。

 歌が上手い上に、ただ話しているだけでも楽しい。さらに俺の歌まで上手だと褒めてくれる。俺にとってこんなに波長の合う友だちはいない。Nさんにとっても、俺がそういう存在だったら嬉しい。

 さて、これ以上褒めるとNさんからクレームが来そうな気がするので、今回はこの辺で。それでも、俺がNさんという人物をどれだけ好きか(友人として)ということは伝わったと思う。要は、歌が上手いことに惹かれてコミュニケーションを取ってみたら、差別意識を持たないとても優しい人だったという話だ。彼女にはいつかなんらかの形で、歌声を世界に届けてほしいと思う。もしそれが実現したら、Nさんのことも応援してあげてください。ファン一号の座は絶対に譲りませんが(笑)。
 のろけ話、失礼しました。

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