名曲237 「岬めぐり」【山本コウタロー&ウイークエンド】
ーーこれぞ王道のフォークソング。教科書的存在ーー
【岬めぐり 山本コータロー&ウィークエンド】
前向きになれるフォークソングが好きだ。ちょっとタイプは違うが、以前にこち亀の「東京ハッスル男」を紹介したことがあった。それに雰囲気の近い名曲を紹介。
1974年に発売された「岬めぐり」。作詞は山上路夫。昭和を代表する作詞家で、私はジ・オフ・コースの「群衆の中で」の人という認識で高校生くらいから知っていた。すると成長するにつれてガロの「学生街の喫茶店」でああ、あの人かと気づいたり、おいおいゴダイゴの「ガンダーラ」もこの人なのかよと驚いたものであった。こうやって作詞家をたどっていき名曲に出会うこともあるのでオススメである。
ちなみに作曲は山本コータロー本人のようだ。
{あなたがいつか 話してくれた 岬を僕は たずねて来た 二人で行くと 約束したが 今ではそれも かなわないこと}
きっとはるばる訪ねたのだろう。
{岬めぐりの バスは走る 窓にひろがる 青い海よ 悲しみ深く 胸に沈めたら この旅終えて 街に帰ろう}
恐らく、お目当てのあの人はもういないのか、出会えなかったのか。想像を膨らませる内容の歌詞に、きれいなメロディーが響き渡る。当時のフォークでは普通だったのかもしれないが、現代の目で見ると非常に秀逸であった。
{幸せそうな 人々たちと 岬を回る ひとりで僕は くだける波の あのはげしさで あなたをもっと 愛したかった}
切ない。周りのカップルを横に、あの波のように激しく愛したかったと。岬をうまく生かした。
{岬めぐりの バスは走る 僕はどうして 生きてゆこう 悲しみ深く 胸に沈めたら この旅終えて 街に帰ろう}
いかにも昭和の男である。そして長めの間奏がさらに哀愁を引き立てる。
{岬めぐりの バスは走る 窓にひろがる 青い海よ 悲しみ深く 胸に沈めたら この旅終えて 街に帰ろう}
ドラマのようだ。小説ならこれに回想を広げてしまえば完成である。うーんいい。芥川賞にこんな感じの作品があってもおかしくない。当時は本当にセンスがあった。山本コータローとウイークエンドの優しい歌声もそれを邪魔させていない。いまの、個性を出して売れてやろうという姿勢のはびこる現代では生まれなかったのではないだろうか。しっかりと実力ある者が評価された時代。それがフォーク、昭和なのだと思う。
【今日の名歌詞】
幸せそうな 人々たちと 岬を回る ひとりで僕は くだける波の あのはげしさで あなたをもっと 愛したかった
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