名曲268 「夜明けのスキャット」【由紀さおり】

ーー雰囲気大爆発のスキャット界レジェンド曲ーー

【夜明けのスキャット 由紀さおり】

 ルールールルルールールールルルー。

 スキャットといえば世界規模だとスキャットマンが代表作といえるだろう。日本の代表作といえば、そうこれ。由紀さおりの「夜明けのスキャット」だ。スキャットマンと違っていかにも日本的なのが特長といえる。

{ルルル・・・ラララ・・・パパパ・・・ルルル・・・}

 1番は丸々スキャット。これには何か意図があるに違いない。それには2番の歌詞もキーになる。

{愛し合うその時に この世はとまるの 時のない世界に 2人は行くのよ 夜はながれず 星も消えない 愛の唄ひびくだけ 愛し合う2人の 時計はとまるのよ 時計はとまるの}

 愛し合うその瞬間の時のない世界。それは夜だ。スキャットの部分について2通りの解釈をしてみた。

 ひとつは、愛し合っているそのさまの情景を映したもの。言葉はいらない官能的な世界。

 もうひとつは倒置法。時計がとまったあとの世界。それには言葉を紡ぐという概念がなく、ルルル……と時が流れぬままにただ深淵へと愛し合う。

 うーむ、ちょっと独りよがりになってしまった。結局のところ、私はこの曲を心中ものだと思っているのだがそんな考察などいらないくらいにメロディーと歌声がきれいなのだ。

 由紀さおりは昭和の、それこそこの曲のように1960年代から活躍している歌手だ。私はドラえもんの映画主題歌(2000年の太陽王伝説)で知ったのだが、当時はそこまですごい存在とは思っていなかった。例によって成長してそのすごさを知ったクチである。スキャットだけで人を感動させる声の持ち主はそうそういない。

 作曲はいずみたく。この方も知っていないとまずい。あの「ゲゲゲの鬼太郎」やドリフターズの「いい湯だな」、「恋の季節」に「幸せなら手をたたこう」「見上げてごらん夜の星を」など後世に残る名曲を作っているのだ。これらの曲はすべてキャッチーだし大ヒットした。表現力という点では最高峰の存在ではないかと思う。

 意味深な歌詞を書き上げたのは山上路夫。この方も昭和の曲を聴いていればだいたい路に当たるといった存在だ。過去には「学生街の喫茶店」で取り上げたことがある。今後も取り上げるだろう。

 いまはこういう曲は少なくなっている。表現技法が乏しくなったというわけではないが、先人たちの作品を超えにくいという意味でもやりにくいのかもしれない。ルルル……ああ、スキャットだけで心が満たされていく。

       【今日の名歌詞】

愛し合う2人の 時計はとまるのよ 時計はとまるの

 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?