名曲95 「北風~君にとどきますように~」【槇原敬之】
ーー曲に罪はない。ポップアーティストの本領発揮バラードーー
【北風】
槇原敬之は今や悪い意味で有名になってしまった。例の覚醒剤の事件が起こって世間の見る目もだいぶ変わってしまったように思う。ミュージシャンと薬はどうして結びついてしまうのか不思議でならない。薬の力を得て作った曲などちょっと引いてしまう。
北風は槇原敬之作品の中でもトップレベルできれいな曲調だ。出だしがまず聖歌のような神々しさを誇る。
{今 君がこの雪に気付いてないなら 誰より早く教えたい心から思った}
曲がきれいなら歌詞もきれい。このフレーズを知ってしまったあなたも同じ経験をしたに違いない。
{小さなストーブじゃ窓も 曇らないような夜 毛布を鼻まであげて 君のことを考えるよ だけど知らないことばかりで 思い出せることは 斜め40度から見たいつもの君の横顔だけ}
槇原敬之の詞は冬の描写がうまいのと同時に恋人への思いが一途に表れた日本人好みであることだ。おそらく男性に向けて書いたのだろうが、それはあまり関係ない。
{さっきよりひどく窓がないてる カーテンそっと開けて僕は言葉なくす}
窓がないてる。泣いてるのか鳴いてるのかわからないのが味があっていい。サビに入る直前もまた絶品だ。カーテンを開けた先に見える景色が想像できるではないか。
{北風がこの街に雪を降らす 舗道の錆びついた自転車が凍えている 今君がこの雪に気付いてないなら 誰より早く教えたい心から思った}
自転車をうまく擬人法で表し、優しい気持ちにさせてしまうのもまたうまい。聞く人の心を温めていくわけですな。
この曲は社会人になる手前くらいのところで知ったので、この部分が刺さっていたのを思い出す。
{誰かを愛したその時から 家族の意味さえ 変わってしまう}
うーん、なるほど。例えば会話の中で「家族っていいよね」みたいなことを言ったときなど思わずドキッとしてしまうだろう。槇原敬之はこういった詩を定期的に繰り出してくるので注目のアーティストである。まだまだ名曲は多いので今後も取り上げていくつもりだ。
【今日の名歌詞】
北風がこの街に雪を降らす 舗道の錆びついた自転車が凍えている 今君がこの雪に気付いてないなら 誰より早く教えたい心から思った