名曲684 「償い」【さだまさし】

ーーしみじみと歌詞を嚙みしめる。それだけで目からーー

【償い  さだまさし】

 今回紹介する曲。これも本来は歌詞を丸々載せたくなるほど、素晴らしく胸を打たれるものだった。ストックとして残したままだったのだが、これが結果的には幸いしたか。

 ひとつの物語。あまりにも哀しい哀しい。とても直視はできない。私がこの曲と出会ったのは大学生のころだった。何かのYouTube動画でのBGMだったか何だったか。あまりにも暗い歌詞(声はすぐさだまさしとわかったが)で動画本編の情報がどんどん頭に入らなくなるほど曲の中身に惹かれていった。そしていつしか歌詞を文字で見たくなり、そして愕然としたのである。

 正直、これを取り上げるのにはとてつもない躊躇いがあったのだ。重い。そして胸が締め付けられる。私が軽い気持ちで「名曲だー♪」と書けるような、そんな生易しいものでは。

 上記の動画を聴いてもらいたいのだが、この話は実話だとのこと。それがまた救いようのないつらさを味わうことになる。最初は「こんなリアリティーな描写を書けるとはさだまさしは天才か」と思ったのだが、まさか実話だったとは。もちろん、その内容を歌詞という短い中でうまく表現したのも天才である。

 決して他人ごとではない。人生万事塞翁が馬。

 メロディーもラストの涙に向かって徐々にテンポが上がっていく。「ありがたくて」の連呼がひたすらきつい。これが本当に心から反省している人間の姿なのだ。

 それを見て涙がとまらないあなたもまた素敵だ。そしてその情景を目に浮かべて聞く者もまた涙がとまらなくて。長いアウトロもうまい。余韻がふたりの姿をより克明にさせる。

 交通教習で流したらどうか、なんて当時は思ったが、実際に流しているところもあるそうだ。こんな曲を聴いたら運転したくなくなるだろうに……でもそれだけの覚悟があるかどうかを示すためにも、大事なことだと思う。私はもう運転しなくなった。償いが私の人生に与えた影響は大きい。

 

 

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