名曲535 「終わりのない空」【秦基博】

ーー痛いほど僕ら瞬間を生きてるーー

【秦基博 終わりのない空】

 秦基博は正直好きではなかった。原因は例のドラえもんファン激おこ映画の主題歌を歌っているからである。もうねえ、私は本当に嫌だったのだ。「そあにいあいよー」なんて馬鹿にしたように真似ていたものだった。

 ところがである。「いいものはいいと言おう」の精神でいると思いがけぬ神曲と巡り合うもの。突然流れたこの曲を耳にしたとき、うわっ秦基博だと思いながらもじっくり聴いてみると、なんだかいいではないかと思い直した。歴史的転換点だった。そうして「秦基博は実力はある」という認識に変わり、いまはフラットな目線でいられている。

{ガラスケースの中 まだどこか遠い夢 ふるえる衝動 焦燥たたきつけた}

{砕けた欠片で 傷つくんだとしても それでもきっと 手を伸ばすのだろう}

{この胸の高鳴り 歓びか 怖れか わけなんてどうでもいい 「たぎれ」と叫んだ}

{痛いほど 僕ら 瞬間を生きてる もう 何も残らないくらいに 閉ざされた今に 風穴を開けよう どこまでだって 自由になれる そう信じてる}

 歌詞がいい。伸びやかなメロディーに乗せて秦基博の歌声がなんとも気持ちいいではないか。

{例えば鳥なら どんな高い壁でも 怯まず風をまとって 越えるのだろう}

{飛べない僕らは 這うように進むだけだ いのちを 一歩 一歩 刻みつけながら}

{この空の終わりを 誰が知るだろうか 果てなんてどこにもない 歩みを止めるな}

{生きるほど僕ら 悲しみを重ねる 踏み出すこと ためらうくらいに だけどそれさえも ここにいる証しだ 絶望だって 抱きしめながら 明日へと向かおう}

 歌詞がいい(2回目)。勇気づけられるではないか。個人的には鳥の部分がお気に入りである。

 この曲は「聖の青春」という将棋の作品の映画主題歌。主人公の青年の人生はまさに映画化にふさわしいほど劇的で、なかなかに見応えがある。最後の主題歌が流れるタイミングがまた絶妙なのだ。ふっとした空白(空黒といいたい)、感情の隙間にねじ込んでくる秦基博。罪な男よ。気づけば涙が。

 映画もおすすめ。だけど羽生さん役の方がいろいろありましてね。うーん傍からはそう見えないのだけれど、まあ作品に詰み、いや罪はなし。もう一度言う。映画もおすすめだ。いいものはいいと言おう。

       【今日の名歌詞】

例えば鳥なら どんな高い壁でも 怯まず風をまとって 越えるのだろう 飛べない僕らは 這うように進むだけだ いのちを 一歩 一歩 刻みつけながら この空の終わりを 誰が知るだろうか 果てなんてどこにもない 歩みを止めるな




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