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(音楽話)47: Aaron Neville feat. Bonnie Raitt and Gregg Allman “Tell It Like It Is” (?)

【魔法】

Aaron Neville feat. Bonnie Raitt and Gregg Allman “Tell It Like It Is” (?)

私には、生きているあいだにちゃんと歌いたいデュエット曲があります。”Don’t Know Much”ーーーLinda RonstadtAaron Nevilleによる1989年の大ヒット曲です。特に、Aaronの歌声を聴いて感動しない人は誰もいないと思います。心の奥に響いてジワーッと温かくなっていく感覚というか、首振って「なんて声なんだ…!」と脱帽するしかないというか、ニヤけてしまうズルさ。

彼は41年米国ニューオリンズ生まれ。50年代には既にヴォーカル・グループで活動していて、60年にソロ・デビュー。“Tell It Like It Is”は66年にAaronがソロとして放った大ヒット作ですが、それ以降はあまり売れませんでした。実は彼には兄のArt(Key)とCharles(Sax)、弟Cyril(Perc)という、既に音楽キャリア(主にソウル、ファンク、ブラック・コンテンポラリー)を十分に積んでいた兄弟たちがいて、77年に皆でThe Neville Brothersを結成するに至ります。すごく売れたわけではないのですが、一部の熱狂的ファンに支えられ長年活動していました。ちなみに2009年にはフジロックフェスティバルに出演、ホワイト・ステージの初日トリを務めています。

この映像の詳細は不明ですが、恐らく80年代後半〜90年代前半頃。The Neville BrothersのTVライヴ演奏にゲストとしてBonnie RaittGregg Allmanが加わっての”Tell It Like It Is”です。米国ブルース界の女王&スライド・ギター永久名人のBonnieと、サザンロックを代表するThe Allman Brothers Bandの渋過ぎるヴォーカル&オルガン担当Greggが、R&B/ブラコン・バンドのThe Neville Brothersのステージに参加するという…超レアで奇跡な映像です。

Greggは途中で一節、超絶渋いヴォーカルをとっていて、恐らくオルガンの音が彼だと思いますが、全体の邪魔にならないよう抑えてプレイしながらもカッコいい佇まい。そしてBonnie、コーラスに少し参加するだけで、ギターは抱えたまま最後まで弾きません(何度も言いますが彼女はスライド・ギターの名手です)。隣のAaronの歌声にウットリ、「この歌声に私のギターなんて要らないわ、みんなAaronの声をじっくり聴いて!」とでもいうかのようなジェスチャーを見せています。
そうです、大物2人が霞むほど、Aaronのヴォーカルは圧倒的。唯一無比。ファルセットの巧みさ、心地良さ、艶やかさ、情感ダダ漏れ。歌が降ってくるのではなく、歌が転がっていく…ゆったりとしたリズムと隙間だらけの音像の中、歌が転がっていく様は、まるで魔法がかかったかのよう。私、この場にいたら確実に泣いてるか、そこら辺の人捕まえて抱きついてます←変質者

歌詞は濃密なラヴ・ソングです、一見すると。でも実はプロテスト・ソングとしての側面もあります。”you”を白人に置き換えると途端に「いつまでも俺たちを弄びやがって いい加減にしろよ」「意固地になるなよ」となる。この曲が発表されたのは66年ーーー黒人や非白人系移民の人権を認知させるための活動が活発になっていった時代。甘ーい歌声の中に込められた想いは、何も恋愛だけでなく、人間を人間として当たり前に認めよということだった…一筋縄ではいきません。

何を感じるかはあなた次第。ちょっとひと休み、少しチルアウト。

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遊び相手が 欲しいなら
どっかでおもちゃでも 見つければいい
俺を惑わすなんて 高くつくぜ
俺はガキじゃないんだからさ

マジだっていうなら
俺のハートを弄ばないことだ、我慢の限度ってのがある
でも俺に愛してほしいんだったら
そん時はそりゃ、おまえを愛するに決まってるだろ

素直になってごらん
自分の気持ちに 恥ずかしがらず身を委ねてみて
でも俺は実際のところ わかってるぜ
俺のこと愛してるんだろ? 意固地になるなよ

(Vocal by Gregg Allman)
人生なんてあっという間 悲しむ暇はない
おまえは今日ここにいるけど 明日はいないかもしれない
ほしいものは ちゃんと手に入れなきゃ
そうやって生きてくんだ やっていくんだよ

素直になってごらん
俺は取るに足らない人間さ
どっかでおもちゃでも 見つけるといい
でも俺…素直にならなきゃね
俺を惑わすなんて高くつくぜ もう待てないよ…

(Aaron Neville “Tell It Like It Is” 意訳)

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