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(音楽話)61: Joe Brown “I’ll See You in My Dreams” (2011)

【夢の中で】

Joe Brown “I’ll See You in My Dreams” (2011)

Joe Brown。1941年英国東部のリンカンシャー生まれで、50年代に当時流行ったスキッフルを歌ってTV番組に登場、60年代は数々のレコードを制作しミュージシャンとしての才覚をあらわし、70年代はロックンロール、カントリー、ゴスペルなどなんでもアリのバンドを結成、80年代以降はクイズなどのバラエティ番組に多数出演するなど、息の長い広範囲な活動遍歴を辿ります。2009年にはMBE叙勲を受けた、まさに国民的エンタテイナーのひとりなのです。
(あだ名は「chirpy Cockney/陽気なコックニー」。コックニーは英国英語の中でも超クセの強い訛りを持つ、いわゆる英国版下町言葉)

彼の親友とも呼べる間柄だったのが、彼の2度目の結婚で介添人を務めてくれたGeorge Harrison。そのGeorgeが2001年に逝去した翌年、仲間たちが集まって追悼ライヴ「Concert for George」が開催されました。出演は超豪華ーEric Clapton(本ライヴ発起人)、Tom Petty and the HeartbreakersJeff LynneBilly PrestonJools HollandGary BrookerKlaus Voorman (The Beatlesのアルバム「Revolver」のジャケットを描いた人でも有名)、Jim CapaldiJim KeltnerRay CooperJim HornTom Scott…もちろんPaul McCartneyRingo Starr、息子のDahni Harrisonなど。それぞれがGeorgeの曲を演奏してその死を悼む中、彼らを差し置いて大トリでウクレレ片手にJoeが歌ったのが、この”I’ll See You in My Dreams”でした。

元々この曲は1924年に発表されたポピュラー・ソング。その後Louis ArmstrongBing CrosbyDoris DayElla Fitzgeraldなどが歌い、62年にはアレンジ版をPat Booneが歌ってヒットしました。それをJoeは、親友を追悼するライヴの最後に演ったのです。

なんて温かい曲なんだろう。私はほぼ毎回、この曲を聴くと泣きそうになって鼻の奥がジーンとなります。それはJoeとGeorgeの友情云々で感傷的になるからだけはありません。普段の生活の中で我慢している諸々の不安や怯えや心の褥が、Joeの歌声が持つ包容力のせいで一気に溢れてしまいそうになるから。

この動画はJoeのライヴ・アルバム「Live in Liverpool」からの抜粋で、件の曲はここでもラストを飾っています。Joeおじちゃんが延々小話をくっちゃべってるので、3:42くらいまで早送りしてください、ようやく歌い始めます。Joeのウクレレ、バックはアコギ、マンドリン、ウッドベース、ブラシを使ったドラムス。それらのアコースティックな音像が、優しく柔和な空気を生み出します。
ホッとしたい時に聴くとその効果は絶大です。オススメ。

+++++++++

寂しい日々は 長くて
黄昏は歌を 口ずさむ
幸せだった時は もうみんな昔のことさ

やがて 僕の目は閉じて
やがて 安らぎを見つける
そして夢の中 君はいつもそばにいてくれる

夢の中で 会おうね
夢の中で 抱き合おう
誰かが僕から 君を奪っていった
でも僕はまだ 君の魅力の虜なんだ

(+)
そのくちびるは 以前は僕のものだったし
優しい瞳は キラキラしてる
僕の行く道を 照らしてくれたね
夢の中で 会おうよ

(+repeat)

僕の寂しい道のりを 照らしてくれる
夢の中で きっと会おう

(Joe Brown “I’ll See You in My Dreams” 意訳)

(紹介する全ての音楽およびその動画の著作権・肖像権等は、各権利所有者に帰属いたします。本note掲載内容はあくまで個人の楽しむ範囲のものであって、それらの権利を侵害することを意図していません)

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