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楽器を始めるのに年齢は重要か?その3

 楽器を始めるのに年齢がネックになる場合がある。それは、もうこの歳で楽器を始めてもどうせ上手くはならないだろう、と思いながらやる場合である。強くそう考えるのなら、10歳だろうと20歳だろうと上達は難しい。潜在意識の力は凄まじい。自分でストップをかけると、残念ながらそこでストップだ。

 楽器は読み書きなどの勉強に比べ、一層、無意識が反映されてしまうように思う。人前で演奏するときだけ上手くいかなかったり、心配事があると練習が進まなかったり、精神面がダイレクトに反映される。

 時々レッスン中、「できない」を連発する生徒がいる。こういう時はむきになって、一言でも多く「できる」と言ってやる。「できない」と繰り返し言っていると、本当になかなかできるようにならないからだ。これは事実。ちょっとピアノのレッスンとは離れてしまうけれど、否定的な思い込みを全部ひっくり返すのは、教える側の大事な役目だ。

 上達には必ず個人差が存在するけれど、それぞれ得意な面が必ずある。クラシックの読譜は嫌いでもコード奏法は瞬く間にものにしてしまう生徒、根気には欠けるけれど初見力が凄い生徒、一曲にとても時間がかかるけれど魅力的な弾き方をする生徒。本人に、どこがどう優れているかを、自分で実感できるよう、具体的にはっきり伝える。レッスン中の言葉選びは本当に重要だ。言葉によって能力が左右されてしまうと言っても、過言ではないと思う。言葉は潜在意識をコントロールしてしまうのだ。

 楽器に限らず、「できない」という自己暗示は百害あって一理なし。この思い込みがないだけで、どれだけ可能性が広がるだろう。しかしこの社会は「できない」へ思考が傾くよう仕組まれているような気がする。本来できるかできないかは自分で決めれば良いのであって、他人の意見は関係ないのだが、あまりにも「できない」への圧力が強いと、自分自身の考え方が影響されてしまう。この歳で楽器はできない、この状況で転職はできない、自分の能力では達成できない、等々きりがない。

 だから楽器を始める時、これは面白そう、これは上手くなりそう、どんどん上達できそう、と思うことは、目標を立てる以上に効果がある。目標は後々義務になりがちだが、自己肯定感に結びつく感情は長続きするものだから。

 

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