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新・オーディオ入門191 オーディオの楽しみ方編 ヘッドホンオーディオ

『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。

 オーディオファンにはライフスタイル、音楽のジャンルや嗜好によって多くの選択肢があります。これらを汎用性のある一般的なオーディオコンポーネントだけで再生することは困難で、独特なオーディオコンポーネントを使用し音楽を楽しむファンもたくさん存在します。どのような選択肢にも楽しみ方はありますし、複数の選択肢を実現するために複数のオーディオシステムを所有するということも多々あります。ここではライフスタイル、音楽のジャンルや嗜好に合致したオーディオについて取り上げてみたいと思います。

 今回はヘッドホンオーディオです。かつては深夜等でスピーカーからの再生が困難な場合にヘッドホンが使用されていましたが、現代ではスマホや携帯用ミュージックプレーヤーが普及し、ヘッドホンでの音楽再生がオーディオの主たる楽しみ方とという方も増えました。ヘッドホンは微小な音もきちんと聴くことができ、歪も少なく、部屋の音響特性に左右されません。近年ヘッドホンの種類は爆発的に増え、安価で高音質なヘッドホンもたくさん出回るようになりました。現在ヘッドホンで音楽を楽しむ環境はこれまでになく恵まれている状態です。反面、多くのオーディオファンがヘッドホンでの再生はを副次的な方法としか考えていません。その理由は超低域にあります。100Hz以下の超低域をヘッドホンで再生するととうしても迫力に欠けます。大太鼓の音は『腹にくる』といいますが、100Hz以下の超低域は耳で感じ取るのに加えて、空気の振動として皮膚でも感じています。ヘッドホンにはこの部分がないため、ダイナミックな音の再生は苦手で、バスドラやベース、オルガンといった超低域を再生する楽器にリアリティが欠けて聴こえるのです。この現象の対策は困難で、トーンコントロール等で超低域を増強してもあまり効果はなく、一部の映画館などで使用されているボディソニックを組み合わせる方法もありますが、聴取位置が固定されてしまいます。『オーディオの魅力は低域』と考える方も多く、オーディオファンにヘッドホンが普及しない原因となっています。

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