見出し画像

新・オーディオ入門195 オーディオの楽しみ方編 マルチアンプ

『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。

 マルチアンプとは、スピーカーをドライブする方式のひとつです。 通常、1組(右チャンネル、左チャンネル)のスピーカーは1台のステレオパワーアンプのみでドライブしますが、 マルチアンプでは複数のステレオパワーアンプを使用します。(2WAYであれば2台、3WAYであれば3台)

 スピーカーケーブルで音が変わると言われます。 パワーアンプとスピーカーを結ぶ回路は大電流が流れるため、 そこに使用しているスピーカーケーブルのわずかなロスによって音質が劣化すると考えられます。 そこでパワーアンプをスピーカーの側に設置し、少しでもロスを減らす工夫をする方法をとる場合もあります。 ところでスピーカーシステムには高域と低域というように帯域を分割するネットワークと呼ばれる回路が内蔵されています。 よくよく考えると、スピーカーケーブルは銅線ですが、ネットワークはコイルや抵抗、コンデンサーによって構成されており、 ロスはスピーカーケーブルの何十倍もあります。 もし、ネットワークを無くすことができれば劇的に高音質になるのではないか・・・というのがマルチアンプの発想です。

 マルチアンプには他にもメリットがあります。 スピーカーに内蔵されたネットワークを微調整すれば好みの音質に近づけることが可能です。 しかし、実際に行うためにはコイルを少しづつ巻いたりほどいたりいった難易度の高い作業が必要で、 さらにこの作業は時間がかかるため瞬時の比較は困難です。 その点、チャンデバ(チャンネルデバイダー)を使用するマルチアンプでは調整はツマミでを回すだけで簡単にできてしまいます。

 マルチアンプにはデメリットもあります。 パワーアンプが複数必要ですし、チャンデバやケーブル類も余分に必要となり多くのコストが必要です。 また、市販スピーカーではネットワークをパスできる機能を持つスピーカーは現在はほとんどありません。 スピーカーを自作するか、市販のスピーカーを改造しなくてはなりません。 かなり難易度の高いマルチアンプ。ライフワークとして取り組むくらいの覚悟が必要ですが、その効果は絶大です。

ムジカ公式ウェブサイトでは連載中の『新・オーディオ入門』のすべての記事の他、製品情報やイベント・勉強会の情報もご覧いただけます。