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Good Singin', Good Playin' グランド・ファンク・レイルロード プロデューサー フランク・ザッパ/1976年

Good Singin', Good Playin' 1976

1.Just Couldn't Wait
2.Can You Do It
3.Pass It Around
4.Don't Let 'Em Take Your Gun
5.Miss My Baby
6.Big Buns
7.Out To Get You

8.Crossfire

9.1976
10.Release Your Love
11.Goin' For The Pastor


◆概要
フランク・ザッパがプロデュースでバンドの長所や魅力を引き出した好盤。

1976年8月9日にMCA レコードからリリース。
バンドは1976年1月の前作を解散するつもりの不完全燃焼の状態でリリース。だがリリースしたことでキャピトル・レコードと完全に契約が終了。

そこから一見関連のないフランク・ザッパをプロデューサーに迎えウルトラ案で新しくMCAレコードとあえて1作品だけで契約。

◆前作から8か月後の短いインターバルでリリースできたのはなぜか?

ギター&ボーカルのマーク・ファーナーとフランク・ザッパの一つの共通点があった。彼らは「クリスチャン」であること。※ザッパは後年無宗教 マークファーナーは牧師になる

宗教思想のみならず、昨今の世相問題や政権、政治、特にこの作品の曲目題材にもなる1975年のベトナム戦争終結や互いの人生観など多岐にわたる話題を交わすうちにのこの2人の人間的知古を得たのではないか?

他のメンバーにとってもザッパと会えるという千載一遇の機会ならば、1枚作品を作れるのであれば了承を得やすかったと推測。

こうした上記から短いリリースタイミングや時間軸も制作の意義も筋が通ってくる。

◆楽曲抜粋感想

2.Can You Do It

モータウンのヴォーカル・グループ「コントゥアーズ」のカバー。
バンド側は一度解散してるのでカバー曲を取り上げる意義が見いだせないので、ザッパ側から「君たちの魅力をこの曲で存分に引き出すことができる」と打診したのではないか?

実際にこの曲を聴くと、バンドメンバーがこれまでにない何か吹っ切れた爽快感のある圧倒させる歌とコーラスと演奏が聴ける。アルバムタイトルのGood Singin', Good Playin'はこの曲から出てきたのではないだろうか。

7.Out To Get You

1曲のみフランク・ザッパがギターを弾いた曲。1曲だけから推測すると、単なる自己顕示からではなく販売側からの「奇をてらった作品にすることでない」という証明のために弾いたのではないか。
実際のギタープレイはかなりシリアスに「ロック」を弾いている。マーク・ファーナーもザッパのぶつ切りギター・フレーズも似せているのも興味深い。

6.Big Buns
しかし「奇をてらわない」と言いつつ、ザッパがコーラスだけ参加したこの曲、トレードマークの下世話なあの「ローダウン・ディープ・ボイス」が聴ける。バンドらしからぬ瞬間を狭間見る一方で、「ああ、やっぱりザッパ関わってる」という不思議な安心感も芽生える曲。

4.Don't Let 'Em Take Your Gun
8.Crossfire
9.1976

短いスケジュールでマークファーナーが過去のストックに頼らずに曲を作った証拠(または意気込みか)。
曲タイトルから政治色が強いのは、フランク・ザッパとの談義からのアイディアと推測する。

11.Goin' For The Pastor

Pastorは訳すと「牧師」だ。このタイトルから制作の経緯など点と線が一気に結ばれた。

◆総評
4人メンバー全員が横一線で歌い上げるというバンドの本来の魅力をザッパが存分に引き出した。各メンバーの歌唱力のフィジカルが圧倒的で気持ちいい。

バンドの原点回帰的がコンセプト。
録音の音質がぎゅっと真空パックされたモノラル録音の音圧のように聴こえる、数多くのライブで仕上がった「圧倒的なバンドの音圧」をザッパが見抜いた。※演奏前の会話や笑い声やカウントをあえて入れてるのははその装飾のためかもしれない。

演奏と歌唱の技能フィジカルが最高潮なのにここで解散するのは残念だが、1976年というロックの「端境期」に抗えることが出来ずに終結を迎えてしまった。

メンバーにとって前作の不完全燃焼をこの作品で払拭し、最後の気力を投入し、それをザッパが見届けた埋もれた名盤。


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