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#14 ミューズ『ウィル・オブ・ザ・ピープル』

服部さんへ

 僕もマネスキン で、イタリア語のロックがこんなにもカッコいいのかと実感したのですが、ジョー・バルビエリの歌を聴いて、イタリア語のジャズもボサノヴァもポップもいいなと、ちょっと目から鱗な感じです。
 イタリア語って、ポルトガル語と似ている気がしました。僕はボサノヴァなんかは好きなので、違和感がまったくなかったのですが、この手の音楽をイタリア語で聴いたのは初めてだと思います。時に囁くような、優しくて甘いジョー・バルビエリのヴォーカル、いいですね。耳と心に心地よく馴染んでくれます。
 ライヴ音源ということもあり、会場の雰囲気はもとより、本人のキャラクターがなんとなく伝わってくるところも、楽しいです。洒脱で、とてもチャーミングな人のように感じられました。4曲目の反応は「ミンナ、スゴイ」にしか聞こえませんね(笑)。地元のライヴで日本語が飛び出したのなら、日本通ということなのでしょうが、イタリア語なのでしょうか。だとしたら、どんな意味!?
 バーリという町も、何気に気になります。よく行く立ち飲み屋に、1年の半分はイタリアで働いている人がいるので、聞いてみるとします。
 

ミューズ『ウィル・オブ・ザ・ピープル』

 ロック・ファンの中でも、好みが分かれる傾向にあるように見えるミューズ。知り合いの大御所音楽ジャーナリストさんも、「クイーンは大好きだけどミューズは無理」と言っていた。それだけクセが強いバンドということなのだろうけど、僕は好きだ。ただ、2010年以降の彼らには、ちょっとついていけていないところがある。つまり、“ギター・ロック・バンド”のミューズが好きなのだ。
 約4年ぶり、通算9作目のニュー・アルバム。何が嬉しいって、僕の一番好きなミューズが戻ってきたことだ。もちろん、単純な原点回帰作などではなく、クラシックからメタル、プログレ、インダストリアル、近作で増量されていたエレクトロまで、あらゆるジャンル/スタイルが、これでもかと言わんばかりに詰まっている。しかし、明らかに軸足はギター・ロックに置いているし、ダイナミズムあふれるバンド演奏とメロディの良さで勝負するシンプルさに、これぞ(オレの)ミューズと快哉を叫びたい気分。ロック・オペラも、ピアノ・バラードも文句なしの出来映えで、全曲驚異の完成度だが、個人的な今日のベストとしては、ドラムの乱れ打ちが痛快すぎる「キル・オア・ビー・キルド」を挙げたい。明日は変わるかもしれない。

 歌詞では一貫して、時代や世界の暗黒が描かれているようなので、読み解きながら聴けば、マシュー・ベラミーの世界にどっぷり浸れることは間違いない。でも、楽しみ方は自由。ミューズ入門編としてもお薦めできる作品なので、難しいことは抜きにして、食わず嫌い状態の人にこそ、ぜひお試しいただきたい。
                              鈴木宏和



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