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#100 PJモートン『Cape Town to Cairo』

鈴木さんへ

 きゃぁ~、鈴木さん、100回目を迎えました! 途中私の事情で、中断することがありましたが、100回目だなんて、よく続いているなぁと、自己満足に陥っております。
 さてさて、鈴木さんがそんなにボン・ジョヴィのことを好きだったとは。私は、アルバム冒頭『Legendary』の「オ~オ~♪」というコーラスに、武道館で観たボン・ジョヴィのライヴが蘇ってきました。同僚にチケットが1枚余っているから、一緒に行かない?と誘われていったライヴ。音楽とエンターテイメント性を追求しているロック・バンドのカッコよさを体感した夜になりました。
 そんなバンドのヴォーカル、ジョンが声帯を手術したとのこと、さらにドキュメンタリー映画が配信となったこと。前回私が少し触れたセリーヌ・ディオンとの共通点も感じています。彼のような人は、音楽制作から離れることが出来ないと思うので、きっと道はまだまだ続くように思いますよ。
 そして、今回私が紹介するのはPJモートンの新作です。音楽の生命力に心惹かれてやまない私を今一番トリコにしているアルバムになります。

PJモートン『Cape Town to Cairo』

 アルバム冒頭の『Smoke and Mirrors』が流れたとたん、生命力あふれるパーカッションにやられた。ニューオーリンズ出身のシンガー・ソングライターであり、キーボード奏者としてマルーン5に参加しているPJモートンが自身のレーベルから出した新作は、30日間かけて南アフリカ、ナイジェリア、ガーナ、エジプトを旅しながら制作したもの。だから、タイトルが『ケープタウン・トゥ・カイロ』なのだ。しかも新曲を揃えて、現地ミュージシャンと録音した類の作品ではなく、アフリカでインスピレーションを受けながら曲を書き、時にはコラボを重ねていった。

 たとえば、2曲目の『Count On Me』ではナイジェリアのファイヤーボーイDMLと、4曲目の『Who You Are』ではアフロ・ビートの創始者、フェラ・クティの孫で、父親がその音楽を継承したフェミ・クティという音楽一家に育ったマーデ・クティとコラボ。マーデはロンドン生まれだけれど、ナイジェリア育ちということで、独特のアフリカ訛りの英語に80年代末から90年代にかけてのワールドミュージックのブームが思い出される。
 さらに⑦『All The Dreamers』では2008年に日本でもデビューしたシンガー・ソングライター、アシャがフィーチャーされていて、優しいハスキー・ヴォイスに再会の歓びがあり、⑨『Simunye (We Are One)』でのソウェト・スピリチャル・シンガーズのコーラスに映画『サラフィナ!』が蘇ってきた。PJモートンにとってはルーツであるアフリカを体感し、自身の血肉とすべく探訪の旅だったと思うけれど、私にとってはこれらのコラボが記憶を掘り起こす思いがけない機会となっている。

 そして、PJモートンの音楽の魂がどこにあるのか。音楽が生活文化に根付いたニューオーリンズで育ち、ビショップでもある父のもとでゴスペルを歌ってきた彼が音楽を愛するうえに旧態依然とした音楽業界に馴染めなかった。その理由がわかると同時に、彼の選択をすごく応援したくなる作品だ。
                            服部のり子




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