#97 ザ・レモン・ツイッグス『ア・ドリーム・イズ・オール・ウィ・ノウ』
ザ・レモン・ツイッグス『ア・ドリーム・イズ・オール・ウィ・ノウ』
好きなんです、この米ニューヨークの兄弟たちの音楽が。これでふたりともまだ20代半ばというのだから、やっぱり才能というやつは恐ろしい。そして素晴らしい。これぞ現代のブリティッシュ・インヴェイジョン。
本人たちも影響源として公言している通り、ビートルズにビーチ・ボーイズ、バーズ、モンキーズなど、彼らの音楽的ルーツは60年代、70年代の黄金期のポップ・ミュージックにある。しかしその年齢を考えてみればわかる通り、そこにはノスタルジーもセンチメンタリズムもなければ、マニアック自慢のような姿勢も感じられない。
「伝統的なソングライティングを祝福したい」と語る彼らが、自らプロデュースして演奏し、歌う曲たちは、まばゆい輝きに満ちあふれている。個人的に一番のツボは、「スウィート・ヴァイブレーション」からの3曲。メロディもコーラス・ワークも極上で、なんだか泣きたくなってきたりもする。
レトロにしてフューチャー。我々世代には懐かしくも新鮮に響くが、10代のポップ・リスナーには異端かもしれないし、現シーンでは浮いた存在なのかもしれない。もっと高い評価を得て、しかるべきだと思う。
……と言うのは、ライター風情の建前でした。売れようが売れまいが、老若男女、レモン・ツイッグスと出会って心ときめいてくれる人がいてくれたら、ただただうれしい。あ、ショーン・レノンが参加していますよ。
鈴木宏和