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#66 ジョルジャ・スミス『falling or flying』

鈴木さんへ

 名前は知っていたけれど、きちんと作品を聴いたのは初めて。2曲目の冒頭で、「Teach me・・・・」と語る言葉に思わず何歳?とネット検索してしまいました。もう、この時点でもうダメですよね~。基本おバカなことを真剣にやるMVは、大好きです。昔々の話ですが、ビースティ・ボーイズが東京で撮影したMVが好きでしたね。これに何の意味があるの~?とか言いながら、毎回笑っていました。
 それにしてもオリジナルメンバー3人揃っての新作は12年ぶりとは驚きです。そのブランクを復帰したメンバーは、どう感じているだろうか、なんてことをまた私は思ってしまう。ロックは、理屈じゃないって思っても脳がロックにならない私ですが、これまた思い出しました、一度だけコンサートでヘッドバンキングをしたことを。アラニス・モリセットの初来日公演でガツンとやられて、気が付いたら、ヘッドバンキングをスタンディング会場の一番後ろでしていました。
 『CHILDHOOD』も好きです。こういう歌を歌う年齢ではあるんですね。最後にグチです、今週のジョルジャ、ほぼ原稿が書けていた段階で、私の操作ミスで原稿が消えてしまいました。こういう時に復活させる方法が知りたいです!

ジョルジャ・スミス『falling or flying』

 ということで、また気持ちも新たに書き始めたいと思う。
 最近「UKソウル」に心惹かれていて、そのひとりがジョルジャ・スミスだ。この新作は、彼女の2作目で、2018年のデビュー作はブリットアウォードを受賞するなど、高く評価されていて、「新星」が当時の誉め言葉だった。そんな彼女の魅力、一番は声だ。よくスモーキー・ヴォイスと言われるけれど、私は紗がかかったような声質で、曲にもよるけれど、どことなく憂いが見え隠れするところに惹かれる。
 そして、今回はロンドンから拠点を故郷のバーミンガム郊外に戻して、地元の友達がいる「デイムデイム」というプロデューサーチームと組んだ。まだ、無名のチームだけれど、彼らが作るリズムが洒脱でいい。刺激的で主張の強いビートがR&B界に溢れるなか、デイムデイムの場合は、自転車のベルか、ペッパーミルのような硬い音が場面展開を生み出し、リズムが音楽を支配することなく、ジョルジャの歌と踊るような絡むのが印象的だ。

 彼女自身の言葉によると、23歳から25歳までの成長と経験をもとに曲作りをしたそうだが、リアルすぎないというか、f***といった言葉を使うことなく、イマジネーションが膨らみ、この愛はどう解釈すればいいのかな、と考える余白がある歌詞。そのなかで「Greatest Gift」という曲は、自分を肯定する正直な心境を吐露した歌で、それがロンドンを離れた理由のようだ。その歌からも伝わってくるけれど、自分を信じて、気心知れた友人とスタジオで音楽を作る歓びを取り戻した新作。『GO GO GO』のようなアコギがザクザク刻まれるロック調の曲もあるし、多彩さも引き出されていると思う。
                             服部のり子

 



 


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