#91 ベンソン・ブーン『ファイアワークス&ローラーブレーズ』
ベンソン・ブーン『ファイアワークス&ローラーブレーズ』
モーガン・ウォーレンの「ラスト・ナイト」、ザック・ブライアン(feat. ケイシー・マスグレイヴス)の「アイ・リメンバー・エヴリシング」、テディ・スウィムズ「ルーズ・コントロール」、ノア・カーン「スティック・シーズン」など新しい、そして幸福な出会いがあり、ここでも報告してきたが、このところズッパマリ状態なのが米シンガー・ソングライター、ベンソン・ブーンの「ビューティフル・シングス」だ。MVがまた、曲のスケール感、世界観(ラヴ・ソングなんだけど)とマッチしていて、いいのですよ。
なんでも、ふたつの曲を同時進行で作っていた本人が、どちらも完成に漕ぎ着けずに悩んでいた時に、プロデューサーだったか友人だったか失念してしまったが、「くっつけて1曲にしちゃえば?」との助言があって、できた曲なのだとか。感情のジェットコースターとでも呼ぶべき、このドラマ性は、だからこそなのかもしれない。
デビュー・アルバム『ファイアワークス&ローラーブレーズ』も力作揃いで、イマジン・ドラゴンズのダン・レイノルズがバック・アップを買って出ている(助言も彼だったかも)ということに納得しつつ、ベンソン・ブーンのシンガーとしてのポテンシャルの圧倒的な高さを、気持ちよく実感できる仕上がりだ。
個人的には正直なところ、「ビューティフル・シングス」のインパクトがデカすぎて、ほかの曲にあまり意識が向かないので、これからゆっくり聴き込んでいきたい。本人にとっても今後、この曲がひとつの呪縛になってしまうかもしれない。でも、これだけの名曲を作り上げることができたのだから、きっとそこを超えてくれるはず。♬超えて〜いけそこを〜、超えて〜いけそれを〜♬ってやつだ(吉田拓郎「人生を語らず」より)。
鈴木宏和