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#36 サントラ『BLUE GIANT』

鈴木さんへ

 マネスキン、グラミー賞の新人賞にノミネートされましたよね。他の候補者を見ると、過去に鈴木さんが紹介したウェット・レッグはいるものの、ヒップホップ、R&Bの強さ、流行を感じさせる顔ぶれになっていましたよね。ロックが厳しい冬の時代を経験していることがわかりますが、マネスキンもインタビューで、バンドを始めた頃、なんでそんな音楽を、と批判されたと言っていました。イタリアだもんなと思いつつ、それでも貫いた情熱をギラギラしたヴォーカルからも感じられます。
 今回私が紹介する『BLUE GIANT』にこじつけるカタチになりますが、音楽に限らず、なにかを創るのにまず必要なのは情熱。他にはなにもいらない、これだけをやっていれば、自分は幸せになれる。そんな情熱を100%注ぐことが出来るものに出会えて、それを信じて、さらに努力を重ねられる人が本当にうらやましい。
 

サントラ『BLUE GIANT』

 人気漫画『BLUE GIANT』が映画化された。「世界一のジャズプレイヤーを目指す」宮本大を描いた物語なので、映像化では当然音楽が重要なカギを握る。そんな音楽を手懸けたのはピアニストの上原ひろみ。初めて『BLUE GIANT』を読んだ時、「音が聴こえてくると感じた」と語っている。彼女は、宮本大と仲間の18歳トリオが演奏するジャズばかりでなく、劇伴も作曲し、その全てがこのサントラに収められている。
 そのなかで劇中で奏でられるジャズの楽曲は、テナーサックス・馬場智章、ピアノ・上原ひろみ、ドラム・石若駿の3名が演奏している。バークリー音楽大学で学んだ馬場智章は、オーディションで選ばれて、芸大出身の石若駿は、上原ひろみが指名したという。映画の企画だからこそ実現した最強のトリオだ。
 映画は序盤から「ジャスってさ」みたいな話から始まり、馬場智章のサックスが流れると、情熱の塊で、宮本大の魂がグイグイ伝わってくる。ジャズってアカデミックな音楽とか、過去の音楽といったイメージを持っている人が少なくないけれど、それを払拭して、ロックじゃんと思わせてくれる。
 トリオによる演奏は3曲で、さらに1曲、テナーサックスとドラムという変則的な編成での演奏が1曲。『We Will』という曲だけれど、試写を観ながら、音が出ないように小さく拍手をしてしまったくらいすごい演奏。情熱と、うまくなりたい一心のひたむきな努力を重ねた演奏の尊さに心揺さぶられた。もう感動。


 また、劇伴では上原ひろみがアルバム『シルヴァー・ライニング・スイート』で共演したストリングスチームと再度組み、『Omelet rice』など、映画のシーンが蘇り、映画と音楽に一体感を劇場外でも楽しませてくれる曲が多く収録されている。
 映画は、今週金曜日17日から公開となる。私が観た試写は、未完成版だったので、もう一度劇場で観たいと思うし、何よりもこのトリオのライヴが観たい!!!!
                             服部のり子


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