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ミュージックフォーラム創刊第一号!講師陣からのメッセージ

1979年、演歌歌手藤圭子さんのプロデューサーだった作詞家石坂まさを先生が当時実践作詞講座(現作詞通信講座)の上級者クラスとして立ち上げた「作詞研究会」の会報誌「ミュージックフォーラム(ミュージックファミリー)」が今年で創刊42年を迎えました。以降多数のプロの作詞家を生み出してきたミュージックフォーラムですが、記念すべき創刊第一号で当時の講師陣からプロの作詞家を目指す受講生へ送られた熱いメッセージ(原文そのまま)をご紹介します。

ミュージックフォーラム創刊第一号表紙

体で書くんだ

作詞研究会会長 主任講師 作詞家 石坂まさを先生

 温故知新という言葉がありますが、今回同人誌を中心にした作詞研究会の発足にあたり、この言葉を反芻しています。同人誌から作詞家が輩出しなくなって久しくなります。自然消滅の型だったのです。

 しかし考えてみれば、ここに新人作詞家不足の理由の一端があるように思えてならないのです。私ごとで言えば石本美由紀先生が主催された同人誌「新歌謡界」に属して、先輩や仲間連中と攻めぎ合い、技術を切磋琢磨して、世に出ても通用する基礎をマスターしたように思います。星野哲郎さんの詞が神技に思え、山上路夫さんの恰好の良い、滑らかなフレーズに溜息をつき、中山大三郎君のセンスに畏怖の念を抱いたものです。

 作詞というものは、孤独な作業ですが、そうかと言って夜な夜な暗いスタンドの下で机に嚙りついていても、それで良い詞が書けると言うものでもありません。体全体で感じたことを、そのまま体で書くといったものなのです。

 また作品はどんどん発表していろんな人の評を得ることが上達の早道です。自分では傑作だと思っても、第三者には全くつまらないものに思えるということがよくあります。自信作をクソミソにこき下されて、やっと自分の一人よがりに気がついたという人もよくあります。

 再び言います。詞は原稿用紙のマス目だけに留まることを好みません。メロディーが付いて歌われて初めて成就するのです。

 この研究会に入られた諸君は、このことをよく肝に銘じてください。とにかく曲として完成することを目指し、そして作詞料として100円でもいいからいただくことです。そこにプロの萌芽があります。

 どうか、この同人誌に作品をどんどんぶつけて、技術を磨いてください。私も積極的にバックアップします。それでは健筆を祈ります。

目指せ、戦う作詞家

講師 RCAレコード制作室長 藤圭子さん担当ディレクター(当時)榎本襄先生  

 我がRCA(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)で、レコード化された「面影めぐり」の牛山かつよしを始め、五指に及ばんとするレコード化される作詞家を生んだ実践作詞講座のシニアクラス、作詞研究会の発足を私は熱い期待の目で見ている。
 
 それは講師陣の一員としての立場としてより、やはり音楽制作の現場の人間として、いい歌づくりをしたいと言う気持ちの豊富だと自己分析している
。我々の脳テンをガッーンと打ちのめすような新人の輩出を渇望しているからである。

 皆さんは既に基礎はマスターされている。ある意味ではそれなりに詞を書ける人であるわけだ。その皆さんに今後望みたい事は具体性を持って詞を書いてほしいということである。

 具体性とは、誰が歌うのか、どんなリズムにするのか、どんな雰囲気のメロディーラインにするのか・・・、そういうことである。

 自分の信念に裏打ちされた青写真付きの詞であるべきで、マクロな目でディレクターにプレゼンテーションしてほしい。時代の捉え方が異なっていても構わない。歌手のキャラクターを全然別な視点から見てもいい。しかし考え方をはっきりぶつけて刺激しなければダメなのだ。常に戦う作詞家であってもらいたいのである。 

1969年9月25日、石坂まさを先生、RCAレコード榎本襄先生、藤圭子さん三人で「藤プロ」を設立し制作した「新宿の女」 作詞:石坂まさを、作曲:石坂まさを みずの稔/編曲:小谷充

自分のキャラクターを鮮明に出した詞を

講師 作詞家 杉山政美

当時誌上で行われた杉山政美先生による作詞教室

 詞を書く上で大切な事は原稿用紙に書いてないバックグラウンドをはっきり持っていることだと思います。原稿用紙に書いたものは便宜上のもので、そこに書いていなくても、はっきり書き手のフィーリング、アピール、ポリシーなどのものが浮彫りにされてなくてはいけないわけです。

 実践作詞講座に皆さんが送られた作品を拝見しますと、それはそれなりの人の世界ではあるのでしょうが、言いたいことが伝わってこないのです。それはさっき言ったようにバックグラウンドがはっきりしてないせいだからです。

 その辺が整理されて一本芯を持ってくると、今度は僕がウカウカしていられなくなるわけですが、そこをよく考えて欲しいのです。

 そのためには自分の得意なフィールドを、まず最初に決めるべきです。僕と石坂先生ではフィールドがはっきり違っています。そしてそれがセールスポイントになるのです。

 フィールドと言うのはある意味で、自分の生活環境の現場と言うことになります。私とイコールで結びつけられるキャラクターであるべきというこ
とでしょう。

 この研究会で勉強される皆さんにはまずこういった土台作りを提案します。

杉山政美先生のヒット作品の一つとして知られる「野に咲く花のように」ダ・カーポ 『裸の大将放浪記』(芦屋雁之助主演)の主題歌 
作詞:杉山政美 作曲:小林亜星 編曲:惣領泰則

今回はミュージックフォーラム創刊号に掲載された講師陣からプロの作詞家を目指す会員の方へ送られた熱いメッセージをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?42年経った今でもミュージックファミリー(ミュージックフォーラム)の想いは変わりません。今年もあと3日ですが、また来年も講師陣があっと驚くようなインパクトのある皆様の作品のご投稿お待ちしております。

では皆様良いお年をお迎えください。

















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