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芸術を知るため伝えるために〜忘れないで、私〜


ある日、あなたのもとに、一通の手紙が届く。
手紙は、しろやぎさんからのお手紙と気付きながらも、あなたは
速攻でついついお手紙をムシャムシャと食べてしまった。
ペンの匂いがかすかに残る最後のひとかけらの紙が舌から消えごっくんした後、

「やってしまった・・」
あなたは、仕方がないので
しろやぎさん宛に、「さっきの手紙のご用はなあに?」と手紙を書く。

……。

もうお分かりの方も多いだろうが、あなたは誰か。
そう。くろやぎさんである。

有名な童謡「やぎさんゆうびん」の、この歌詞から得られる情報は
わりと少ないながらも、様々なイメージが浮かび上がるのではないだろうか。
くろやぎさんがポストに手紙を取りに行くシーンからイメージが始まる人もいれば、くろやぎさんを執事の設定でイメージする人もいるかもしれない。


景色はのどかな田舎か。

季節・時間は天気が良くあたたかい春の午後か。


誰かの想像・創造の産物を一括りにして「芸術」や「文化」などというが、それらは、つくった人の元を離れて、他の誰かの脳内に抱かれる時、先ほどの
童謡のように、他人の想像の産物を受け取った人が連想して、自身の体験などを歌詞などの作品から見えるイメージとくっつけて、一つの共有の形となる。

しかし、誰しもが自由に解釈して良いかというと、そこは
微妙に違っていて、こと偉人と言われる人がつくったものは、ある程度の
情報を知っておくことが必要になる。名画や名曲と言われるものがそれにあたる。
そんな時、情報の整理の仕方として有効なのが、英語学習などで必ず習う
5W1Hである。

・WHEN いつ
・WHERE どこで
・WHO だれが
・WHAT なにを
・WHY なぜ
・HOW どのように

さらにHOW MANY どのくらい?
HOW MUCH いくらかかった?などを加えられ
「5W2H」「5W3H」となる場合もある。

例えば、名画と言われる「モナ・リザ」
描いた人は、レオナルド・ダ・ヴィンチ
この絵画の場合、2つの5W 1Hが成り立つ。
一つはレオナルド・ダ・ヴィンチ
そしてもう一つが絵画の主役モナ・リザについて・・

試しにモナ・リザの5W 1Hを作ってみる前に、
このモナ・リザの魅力的であり恐ろしいところの一つに
一度、目があったら見つめ続けてこられるところにある。

どこの角度から見ても、視線が合い。ほんのり微笑みかけてくる。

見透かされ、お見通しですよ。と言われているような、だけどこちらからは、
この女性のことは、いや、女性かどうかもわからず、謎めいている。

この微笑みや佇まいを「霊性」と言い表す人もいる。

こうした魅力をふまえてモナ・リザの「5W1H」をつくってみると


【WHEN】    
 1503年に製作が開始され4年の歳月をかけて描かれたと見られる
 ただしその後も、何度か加筆や修正をしていたとみられる

【WHERE】  
 モナ・リザの背景にある景色について、イタリアの特定の
 場所まで解明されているが、その場所とこの絵の女性との関わりなどは
 わからない

【WHO 】
 モナ・リザは実在したと思われる人物で、リザ夫人という意味
 リザ夫人自身の家族が、ダ・ヴィンチに依頼して描いてもらった説が強め

【WHAT】
 イタリアルネサンス期の代表的な画家レオナルド・ダ・ヴィンチにより描かれた作品

【WHY】
 ここで特筆すべきなぜ?は、依頼されて描いた絵であるにも関わらず
 生涯死ぬまでこの絵を離さなかったことの謎であろう。

【HOW 】
 この絵は油絵の具で描かれている
  何度もいうが、依頼者の手に渡らず、
 生涯にわたり何度も、ダ・ヴィンチの手により、加筆・修正されている

さらにダ・ヴィンチがなくなったのは、
生まれ故郷のイタリアではなく、フランスのアンボワーズ城だったため、
作品は、パリのルーブル美術館に収蔵・展示されている
よって、イタリアとフランスの間でモナ・リザをどちらの国が所有すべきか
長年議論がされてきた。

書いていて、ふと思った。
これを読み進めてくださっているあなたは、
どんなWHYを思い浮かべるだろう?

モナ・リザを描いた画家
レオナルド・ダ・ヴィンチは、

【WHEN  】
 1452年4月15日に誕生ー1519年5月2日死去

【WHERE 】
 イタリアで誕生し、フィレンツェで活躍、晩年はフランスに渡る。
 名前の由来はヴィンチ村のレオナルドという意味
 ちなみにモーツァルトもウォルフガング湖の近くで生まれたため、
 名前にウォルフガングが使われている

【WHO 】
  ルネサンス期のイタリア・フィレンツェで活躍した画家
 公証役場の役人の息子として生まれたレオナルドだが
 父は仕事に忙しく、小さい頃に母が亡くなった。
 貧しくはないし、義母とも仲は悪くはなかったらしいが
 孤独な少年時代を過ごしたのではないかと言われている。
 14歳の頃に、父の勧めで、ヴェッキオ工房に弟子入りすることになる。
 弟子入りしてから師匠ヴェロッキオが製作していた絵画「キリストの洗礼」に
 天使の一人を描くことを任された。
 描く予定の天使の隣には、すでに師匠ヴェロッキオが天使の絵を
 描き済みだった。空白のところに描いたレオナルドの天使を見て
 その後、ヴェロッキオは一切、描かなくなったという。
 当時、メディチ家がフィレンツェを支配していた時代、豪華王といわれた
 ロレンツォ・メディチのもとで、絵画や彫刻の依頼を受ける。

【WHAT】  
 作品数は多くはないが、主要な絵画としては、先に挙げた
 モナ・リザ 岩窟の聖母 受胎告知 最後の晩餐

【WHY】
  レオナルド自身が謎だらけである。
 その一つが、鏡文字である
 知られたくないことがあるからなのか、あえて・・のことなのか
 マルチな天才のかくノートには、都市計画、空を飛ぶ方法
 解剖学に至るまで、分野は、多岐に及んだ

【HOW 】
  上述したように、当時のイタリア・フィレンツェは、
 ロレンツォ・メディチが支配をしていた。
 豊富な資産を有する彼の庇護のもと、レオナルドやそして
 ミケランジェロもその才能に磨きをかけた。

 メディチとしても、フィレンツェに続いて
 これからルネサンスが花開こうとしていたオランダやベルギーなどに
 イタリア・ルネサンスの才能あふれる画家や彫刻家たちを送り込む
 商売の側面もあった。
 しかし、レオナルドは、終の住処をフィレンツェやローマなどではなく、
 フランスのアンボワーズ城の近くにした。



このように、プロファイリング的な要素を情報として
インプットしておくと、絵画を見るとき、音楽を聴くとき
作品の背景を知ることで、作品を良く解釈でき、
また作品の見方が変わる場合もある。
天才や偉人と言われる人も、当時、市井の人間の一人として
さまざまなことに悩んだり。苦悩したり、歓喜しながら生きていた。
ただ、別次元のものに接するというよりも、自分の隣近所の
変わり者のおっちゃんが、すっごい絵を描いていた。音楽を作曲していた
と考えると、その人は、なんでそんなにすごいのか知りたくならないだろうか。

作曲家を履歴書のテンプレートで紹介している本がある
三枝成彰著 「大作曲者たちの履歴書」上下巻 中公文庫
絵画をプロファイリングしているのは
中野京子著 「怖い絵」角川文庫
などがある
ご一読されてみては、いかがだろうか。

冒頭の童謡「やぎさんゆうびん」

仮にあなたは先ほど、くろやぎさんだった。
くろやぎさんであるあなたは、紙を見るとすぐに食べてしまうことの生態としての山羊のサガを、まずどう思っているか想像してみてほしい。
さらに「さっきの手紙のご用はなあに?」と書いた手紙を、この流れでいくと、ひょっとして、のちに今度はしろやぎさんに食べられてしまうかもしれない因果応報っぷりを。
あるいは、お手紙をやり取りできる知的なやぎ達だけれど、本能には逆らえない
山羊としての哀感を感じてほしい。

そこに芸術を理解しようとする姿勢や、芸術を作り出せる息吹や未来が見える。
その姿勢で前を向くと。必ず、開けてみたくなるドアが次から次へと現れるのだ。 


教室では生徒さん達に芸術以外にも点を線でつなぐためにも
古代文明や歴史を含めあらゆることをお伝えしている。
教えるというよりも情報の共有という感じだ。
そして実際に【5W1H】は、伝える側も役にたつ。
レッスンの内容を構成するとき、【5W1H】をベースに内容を
書き出していけば、情報の取りこぼしが少なくなる。

さらに大事なことは、毎回、何度も言う

なんなら次の回にも、前回のことを、しつこく言う

それは、生徒さんへの愛もあるが、正直なところ
私が忘れないためでもあるのだ(苦笑)

※ステキなヤギの画像、使わせていただきました。感謝





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