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新譜レビュー(RADWIMPS)

「2+0+2+1+3+1+1= 10 years 10 songs」(2021年3月11日発売)

本作について

 2011年3月11日。東日本大震災が発生し、直後に義援金プロジェクト「糸色」を立ち上げたRADWIMPS。
 本作は、震災1年後の2012年から毎年3.11に「誰でも自由に無料で聴くことができるように」Youtube上で公開していた音源を初めてアルバムにしたものである。よって本作も今年中の収益は全額、日本赤十字社や自治体に寄付し東日本大震災を始めとする日本の災害の支援金に充てるという。

 曲順は公開した曲順になっており、最後の2曲は今年新たに書き下ろした新曲になっている。

01.白日 (10 years ver.)

 2012年に公開した『白日』を今回アルバム制作にあたり再録したもの。
 この頃の楽曲は"被災した人々に寄り添う"という気持ちが伝わってくる。特に「誰かに空いた穴はさ 誰かが奪ったもんなら ねぇ誰が償えばいい 誰を差し出せばいい」というフレーズは、震災で多くの大切な人を失ったけど誰に殺されたわけでもなく、悲しみや憤りのやり場がない人々の気持ちを代弁しているように感じる。

02.ブリキ

 2013年に公開された『ブリキ』
 「もう少ししたらね もしかしたらね 「全てが幻だったのかもね」なんて笑える日が来るからね」というサビに、なんとも言えない気持ちにさせられる。被災して2年。まだ満足に生活できているはずもなく、この歌詞はもしかしたら酷だったかもしれない。しかしこの言葉で救われる人も少なからずいたのかもしれない。

03.カイコ

 2014年に公開された『カイコ』
 冒頭の逆再生のシーンは何度聞いても鳥肌ものだ。「世界は、あとはもう壊れるだけ」を逆再生しており、再興を意味しているのではないかと考えている。
 個人的にこの時期からRADWIMPSを追うようになった思い出もあり、本アルバムの中で最高傑作だと思っている。

04.あいとわ

 2015年に公開された『あいとわ』
 この題名には色々な意味が込められていると思う。愛とは、愛永遠、あ糸わ(あなたと私を繋ぐ系)...。崩壊や破滅のそばにひっそりと存在する愛について、以前よりも刺激の強い言葉(原発が吹き飛ぶ、津波など)を使いつつも諭しているこの曲。ラスサビ前のドラムが津波のように感じられて不安になるが、ラスサビの愛の歌詞で救われるような気がする。

05.春灯

 2016年に公開された『春灯』
 MVは当時の様子を日本各地の人がどう感じたかというメッセージが載せられており、被災者には「亡くした大切な人を忘れないで欲しい」というメッセージ、日本中の人には「5年経ったけれど当時の気持ちを忘れないで欲しい」というメッセージが込められていると感じる。

06.空窓

 2年飛んで、2018年に公開された『空窓』
 震災から7年経過し、変わったものと変わらないもの。RADWIMPSは昨年の2017年に映画「君の名は。」で世間から大注目を集めた。音楽性が変わったと言われるようになったけど、変わらない思いがあるからこうして曲を作ることに戻ってきてくれたのかな、と当時感じた。
 「帰りたいのは あの場所よりか あの人とあの時に 帰りたいだけ」

07.夜の淵

 2019年に公開された『夜の淵』
 夜空の星を想起される歌詞が綴られているが、きっと停電を通して部屋に灯る灯り一つ一つを星と見立てて、その繋がりを星座としているのだと思う。
 2018年は日本各地で地震や豪雨に見舞われた年だったこともあり、今まで以上に悲しみよりも団結や絆について触れた曲である。

08.世界の果て

 2020年に公開された『世界の果て』
 今までとは曲調の大きく異なる、新しいRADWIMPS音楽。
 この時期から流行し出した新型コロナウイルス。だんだんと東日本大震災の記憶が薄れていく。知らない世代が増えていく。しかし、実際にはまだ元の生活が戻らない人が日本に存在している。そんな人にこそ音楽を届けていきたいという決意のようなものすら感じた。

09.かくれんぼ

 2021年に公開された1曲目、『かくれんぼ』
 かくれんぼのように急にいなくなった"あなた"と、まだ現れてくれないのかと現実逃避する"わたし"。「もういいよ」と言いそうなあなた。でも残された人からしたらあなたの声で言ってくれないと振り切れないという切なさ。
 今後も「人生かけてのかくれんぼ」をするから、そのままどこかで私をみていてくれないかという内容には、10年経った今切り替えようとする考えも伺える。
 でも「来世の鬼はあなたで決まり」だから、私を見つけにきてね。

10.あいたい

 2021年に公開された2曲目、『あいたい』
 『かくれんぼ』とは打って変わって、まだ君を忘れられない気持ちを描いている。「会いたい 会いたい 会いたい 会いたい」と繰り返す、でもそれ以上の気持ちは10年経った今も生まれず、会いたいだけなんだという。「君にもう一度出逢える奇跡」を願うにも「すでに君を見つけた時に使っちゃったから」その願いは叶えられない。正直、胸を打たれました。

最後に

 この記事を書くことでこれまでの曲にも、当時とは違った感情で向き合うことができてよかったです。今作は自分の中で大切な一枚になると思います。 
 被災したわけでも、その人たちの気持ちがわかるわけでもないけど、せめて忘れずにいようと思います。

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