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2章第6話 同じ境遇の元で

「私の帰る村はもう存在しない……ホコリタケ族は私で最後なのだよ」

 先程と一転して落ち着きを取り戻したムッシュは、再び焚き火の光を受けながら、静かに口を開きました。
 淡々と、ただ事実を述べるかのように――感情的ではないのに、だからこそどこか、ひとつひとつが胸にずしんとくるような、そんな声でした。

「君たちの村を襲った怪物は私たちの村にもやってきて、村人もろとも根こそぎ村を吹き飛ばして行った。
 嫌われ者だった私はいつものように村はずれの洞窟で一人研究を続けていたが、爆発音に驚き村に戻った時にはもはや生存者は誰もいなかった……」

 ポルチーノくんの脳裏に恐ろしい化け物とイエロー村の惨状が蘇り、身がこわばります。

「君たちの村を襲った時はまだ復活したばかりで、そこまでの力が出せなかったのだろう。しかし、私の村では違った……。
 もはや無駄だと分かっていたが私は助けを呼ぼうと必死に走った。だが、分かったことは私は弱く、走り続ける体力すらない能無しということだけだった……」

 イエロー村では少なくとも、幼菌たちが逃げる時間も、成菌たちが化け物に勝負を挑む時間もありました。
 しかし――ホコリタケの村は、そんな時間すらもなかった。勝負ですらなく、一方的な虐殺。大人も子供も、為す術なく刈り取られていったのです。
 きっと彼が十二分に走れたとしても、ホコリタケ村の結末が変わることはなかった。……しかし、ムッシュは己の無力さを噛み締めずにはいられませんでした。

「私も君たちと一緒に走れるようになったら、誰かを救えるようになるのだろうか?」

 自分を変えたい――。
 決意にムッシュのメガネがきらりと光りました。

「私の望みは、これ以上不幸なものを増やさないこと……。
 私の知識と力で、誰かを守り、救えるようになること……。
 それに尽きるのだよ……」


「そ……そんなに大事なこと……」
「なんで今まで黙ってたっポル……?ひどいこと言ってごめんポル……」

 ムッシュの話を聞いたポルチーノくんと幼菌は、涙があふれて止まりません。道端に倒れてて、やたら怒りん坊で小声早口で、わけわからない妄想で父だの師匠だの言い出した変なやつだと思ってたら(実際間違ってはいないのだけど)、実は自分たちと同じく故郷壊滅の悲しみに打ちひしがれていただなんて――。

 もはやこれは運命かもしれない。
 化け物討伐の志を共にするものとして、我々はひとつだ――。

「わかった……一緒に来いッポル!!!」

 かくして、ポルチーノくんのパーティーにムッシュが加わり、新しい旅が始まるのでした。
 ――が。

「早速出発するッポル!ムッシュ……準備はいいッポル?
 遠慮はなしッポルよ!!」

 スタート直後にちぎられるのであった。

 ――やっぱりムッシュは速くなかったね!


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