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大阪と無職 ♯27日目


 昔から新幹線で飲むお酒が大好きだった。もともと1人でも晩酌する程度には酒を飲むのが好きではあるが、新幹線で駅弁を突きながら、飲む缶ビールや酎ハイは格別である。

 仕事を辞めると、当然出張もなくなるし、負い目からか、どこかに遠出をしようとすると気も生まれて来ず、生活圏内の移動に留まっていた。


 とはいえ、閉塞した日常から一時的に抜け出すために、旅行があるのかもしれないし、(閉塞の意味が違う気もするけど)無職にだって「非日常」を味わう時間が必要なはずだ。そして、無職であっても、きっと移動の自由は保障されている。

 善は急げということで、昨日朝9時発の新幹線で、大阪へと向かった。


 このあと仕事が控えているわけでもないので、午前中であっても、堂々とサーモンいくら弁当とビール・酎ハイを嗜む。


 大体新大阪まで行く時は、名古屋あたりで酒かが足りなくなって、車内販売でウイスキーの小瓶を買い足していたが、もう車内販売は終わってしまったらしく、東京駅で過不足なく買わなければというプレッシャーに苛まれるはめになった。


 到着後早々、難波で串カツを食べる。この年になると、お肉というよりは、紅しょうが、ししとうといった野菜系が酒にも合って体に沁みる。ここでもビールや酎ハイを飲む。


 酔いが少し回ったところで気づく。特に目的地を定めていなかったことに。パッと思いついたのは大阪城。大阪城に訪れていた人の大半は外国からの観光客ばかりであった。円安をとりあげながら、どこにいっても外国人ばかりで日本経済大丈夫か?なんて言ってる人もいるが、観光地として選んでもらっているうちが華なのであれば良いのではないかと思う。


 その後は、大阪城の近くにある大阪歴史博物館へ。のんびり見学していたら、17時には閉館するということで、半ば強制的に追い出されてしまった。自分には時間が無際限にあると思っていたが、世の中は違うということに気づく。


 わずか半日足らずの滞在であったが、そのまま新大阪に向かい、新幹線で東京に戻ってきた。もちろん、帰りの車内でも、駅弁とお酒を楽しんだ。たまにはこういう日があってもいいんだと、自分に言い聞かせながら。

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