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図書館を頭に被って暮らしたい

先日、スーパーで買い物をしているときに初めて「うっせぇわ」を耳にした。世間で流布されているイメージのとおり、それはかまびすしい曲だった。

34歳の成人男性であっても、「うっせぇわ」と口にしたくなる場面は多い。しかしそれは抑圧的な大人、あるいは世間の無理解といったメタフィジカルなものに対してではなく、フィジカルな音そのものに対してである。例えば、爪を立ててキーボードをがちゃがちゃがちゃがちゃと叩く音。頭蓋骨を大きなマイナスドライバーか何かでコツンコツンと叩かれているような心持ちになり、落ち着かない。むろん取り組むべき作業にも集中できなくなる。すみません、もう少し静かにタイピングしてもらえませんかと言いたいところだが、本人は悪意があってやっているわけではないだろうし、こちらとて無口で神経質な忌むべき人物というイメージを強化したくはないから、なかなか言い出せずにいる。

もし仮に、我々が普段使っているキーボードが、MIDI鍵盤のようにベロシティ値が設定されていて、強く叩けば叩くほどフォントのサイズが大きくなるという仕様だったのなら、きっと本人もその打鍵の強さに気がつくだろう。しかしそんな製品があったところで、果たして誰がそれを買うのかという疑問は残る。

ともかくそうした物理的な音に対して「う、うるさい・・・」と思うわけである。かといって、かまびすしく「うっせぇうっせぇうっせぇわ」と言って対抗しようという気にはならない。そうするよりも、もっと静かな場所へ退避したいのだ。その静かな場所とは図書館に他ならない。けれども日中は時間および空間的に拘束されているから、ストレスを感じるたびに図書館へ逃げ込むわけにはいかない。それゆえ頭からすっぽり被れるサイズの図書館があれば良いのにと思った次第である。ていうか、それってサウスパークに出て来たブッダボックスじゃん?

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