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○○さんがあなたを評価しました

メルカリで買ったものが家に届き、封を切って中身を確認したのち、受け取った報告をして、しばらくすると「○○さんがあなたを評価しました」という通知が届く。その通知を見るたびにぞくっとする。なぜなら日頃より評価に飢えているからだ。メルカリで取引した人は鳥居を評価してくれる。それが素直に嬉しいと思える。

評価されるといっても、こちらは出品者から商品を購入しただけであり、大層なことはしていない。単にトラブルを起こさなかっただけの話である。それでも人から評価されると小鼻がぷくりと膨らむ。

メルカリで買い物をするのがやめられない。その理由は出品者のみならず購入者も評価の対象だからかもしれない。お買い上げへの感謝や発送の報告に関する連絡が届く度、律儀に返信している。お互いにただ決り文句を返しているだけに過ぎない。けれども、そこにはささやかな交歓があるように感じられるのである。

TOHOシネマズで映画を観に行き、席について上映が始まるのを待っている間、スクリーンに『紙兎ロペ』が流れるたびに鼻白んでいた。決して安くはない金を払ってわざわざ劇場まで映画を観に来ている客に対し、お得なサービスに関する茶番じみた広告を見せるとは何事か。劇場はどのような権利があってそのような狼藉を働くのか。考えれば考えるほど腹が立ってくる。

けれども、一旦サービスを提供する側と享受する側の事情を抜きにして、ロペとアキラ先輩のやり取りを眺めていると、気持ちが和らぐところがないわけでもない。というのも、野心のない彼らの会話が無邪気で愛らしく思えるからである。つまり彼ら最初から客を笑わせようとしていないのだ。

春日武彦は次のように言っている。人間にとって精神のアキレス腱は所詮「こだわり・プライド・被害者意識」 の三つに過ぎないと。どれも厄介だといえるが、プライドは中でも始末が悪い。意識しようとしまいと、相手を値踏みし、俺のほうが賢い、俺のほうがものを知っている、俺のほうがお洒落、俺のほうが肝が据わっている、俺のほうがユーモアセンスに恵まれているなどと思い込もうとする向きがある。とはいえ、そんなのはプライドの高いお前さんだけだよと言われてしまえば、ごもっともというほかない。

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