伊藤寿朗の博物館法 ー伊藤寿朗「現代博物館考」

第三世代論、あるいは地域博物館論といえば、伊藤寿朗さん。

博物館法について書いた文章を今日は紹介します。

しかし博物館の自由とは、設置者や管理者のための自由ではない。博物館は、市民のためにあるのであって、設置者や管理者のためにあるのではない。

(略)

登録博物館になるということは、博物館としての、固有の目的と機能をもった運営が条件づけられるということである。それはなによりも、市民に対する公共的責任をもつ運営と、そのための努力が、法として求められてくるということである。

そして、伊藤さん的法解釈が続く。

まぁ、たとえば、「博物館資料の利用に関し・・・図書室等を設置してこれを利用させること」「博物館資料に関する講演会・・・・等を主催し、及びその開催を援助すること」というのは、

市民を一方的な教育対象としてではなく、市民自身による、自主的で主体的な自己学習の場を保障し、援助することが明確に規定されている。

ほかには、「博物館は、その事業を行うに当っては、土地の事情を考慮し、国民の実生活の向上に資し・・・」は、

博物館の各種学芸活動は、なによりも「国民の実生活の向上」をめざさなければならないものであることが、あまりにも明確に規定されている。

そして、極めつけは、

問われるべきは、博物館法ではなく、各自治体における、博物館行政の在り方なのである。

※以上、引用はすべて伊藤寿朗「現代博物館考」『調査季報』94号、1987年6月


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