見出し画像

弥次喜多が帰ってくる 2

2016年からスタートした弥次喜多シリーズの思い出のシーンを振り返っています。思い出は美化されます(笑)私の感動はストーリーと別のところにあったりします。ふんわり読んでいただけると嬉しいです。


さて、翌年、八月納涼歌舞伎に弥次喜多が帰ってきました。「歌舞伎座捕物帖(こびきちょうなぞときばなし)」今回はミステリー仕立てです。

出演者がかなり増えて驚きました。ただでさえ大勢だったのに、中村屋兄弟、巳之助さん隼人さん児太郎さん方が加わり、極めつけは澤瀉屋の中車さんが参加することになりました。中村屋の二人は出番が少なかったけど(全部の部に出演していたから)楽しそうでしたし、何よりお客が湧きました。

で、今回は旅をしない(笑)

1作目より歌舞伎のパロディで攻めてきました。これが私には嬉しかった。普段は観ることのできない配役で「四の切」を劇中劇として観ることができました。

ちょっと残念だったのは、弥次喜多の幸四郎さん猿之助さんのお衣装がずっと歌舞伎座の大道具さんだったこと(笑)自分たち以外の出演者に見せ場を作り、二人は脇にまわったような感じに見えました。謎解きは金太郎(現 染五郎)くん團子くんが頑張ってたし。あ、でもラストはしっかり二人が持っていくのですが。

事件は歌舞伎座で起こります。
弥次さん喜多さんはお金が無くて大道具のアルバイトをしています。「四の切」の初日を前に役者さん方が舞台稽古をしている中、殺人事件が起こります。確か3人殺されてましたよね?無事に初日は開くのでしょうか!?と話は進みます。

意表を突かれたのは、登場から宙乗り(笑)鳥屋からの逆走で、前作で花火で飛ばされた二人が落ちてくる、みたいな。

もう一つ驚いたのは、納涼歌舞伎初出演の中車さんの座元 釜桐座衛門。カマキリザエモンっていうだけで笑える。キラキラの緑のお着物に、座紋のカマキリ。歌舞伎座の本当の座紋は鳳凰ですが、この時だけカマキリの絵の揚幕だったのも大道具さんの本気を見ました(笑)

案の定、昆虫の話を披露する場面があり、なんとその場面は毎日アドリブだったとか。芝居では猿弥さんが途中で止めるのですが、昆虫話が面白くてそのうち放置するようになっちゃった。

中車さんの奥さんが児太郎さんで、長身を活かした上から目線な悪女はとても面白かったです。中車さんも強欲で性格悪いから夫婦ですごいことになってました。

「四の切」の配役が奇跡でした。静御前でまず登場するのが巳之助さん。巳之助さんの赤姫姿は美しい。。けど、気性が荒く、べらんめえ調(笑)姫姿のまま、野太い声で弟子やスタッフに怒鳴り散らします。これが笑えた。

また、巳之助さんはこの後に狐忠信の衣装で登場し、床から落ちて早替りするあのシーンや百周りするシーンも演じます。観るたびに早替りが速くなり進化していました。

もう一人の静御前。。それはリアルに50年ぶり赤姫姿になった竹三郎さんでした!自然に出てきた時にびっくり!お客が湧きました。

なんかもう、猿之助さんの愛情を感じるわけです。竹三郎さんと寿猿さんが喧嘩するシーンもあったりして。まわりに羽交い絞めされるほど(笑)


殺人が稽古中に起こり、猿之助喜多さんが、ケレン部分の舞台裏のタネ明しをながら推理するシーンがありました。そこまでタネを明かしていいの!?というくらいに大胆に披露しちゃってた。当たり前ですが説明が上手いし(笑)「詳しいね」みたいに言われ、「何百回もしてるから」という感じで返事していたのも笑いました。喜多さん、かっこいい~!となる。

謎解きの結末が前代未聞の2パターンでした。妖しい二人のどちらを取り調べるか。。「どっちを取り調べまSHOW」!お客の拍手の大きさで、その後のストーリーを決定するという裏方さん泣かせの演出(笑)弥次喜多のマイクパフォーマンスが楽しかったです。

でも私はそのことよりも事件が解決して、無事に「四の切」の幕が開いたラストシーンが感動でした。

ここの狐忠信は隼人さん。奥庭の場面です。
先に途中まで演じた巳之助さん、そして隼人さんは、澤瀉屋の「四の切」をこの先に演じることはほぼ無いと思うのです。猿之助さんの親心なのか。。一部分とはいえ初役で挑む二人を見ることができて嬉しかったです。観るたびに進化していました。

そうそう!すごいのが義太夫が門之助さん、三味線が笑三郎さんという(笑)お二人は本職の方が座っている定位置で、本当に語って弾いてた。ものすごい熱演で拍手喝采でした。

で、幸四郎さん猿之助さんは。。なんと荒法師!初日はびっくりしすぎて笑いが止まりませんでした。花道で着替えてましたよね?もう一生観ることはないでしょう。そして、隼人さんが翔ぶと思いきや、ラストはやっぱり弥次喜多が荒法師で翔んで行きました。

猿之助喜多さんは桜吹雪にキレていた(笑)

またまた幸せな余韻。本当のところ、もっと二人がバンバン活躍するのが観たいなーと少し思ってしまったのですが。。まさか翌年は泣かされてしまうとは。

続く

aya


この記事が参加している募集

舞台感想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?