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大阪松竹座「歌舞伎特別公演」第二部

初日に観てきました大阪公演のお話。4日間だけなので明日はもう千穐楽です。無事に幕が下りますよう祈っています。

さて、第二部です。まずは「博打十王」のこと。2014年浅草歌舞伎で上演されて以来です。2011年亀治郎時代の自主公演「亀治郎の会」で41年ぶりに復活上演されました。

この舞踊は三代目猿之助さんが脚本を書き、1970年にご自身の自主公演、歌舞伎座で行われた「春秋会」で踊っただけなのだそうです。その後に三代目が改訂し、亀会で亀治郎さんが復活させました。

2011年「亀治郎の会」パンフレットより

私の記憶は、まず地獄の住人たち以外が頭に幽霊がつける三角の布をしていた光景。今回の幕開きも長唄の皆様、附け打ちさん、後見さんまで頭に三角布!ビジュアルから楽しいのです。

布には「シ」(死)を裏にした文字が書かれています。猿三郎さんのblogで知りましたが、あの世は、現世とは何事も逆様という意味を表すそうです。

場所は、この世とあの世の間、六道の辻。地獄行きが極楽行きかの分かれ道です。

2011年亀治郎の会パンフレットより

こんなに面白かったですかー?というくらい完全に今まで観た過去の舞台が上書きされてしまいました!猿之助さんの博奕打が、愛嬌たっぷりなんだけどスキが無く、百戦錬磨で一枚上手。憎めず、逆にスッキリするくらい気持ちよかったです。

揚幕から登場すると、さっきまでの女房おとくはどこへやら(笑)軽妙な語りで私たちを死の道行に誘います。ここでお客の心を鷲掴み。何だか楽しそうな道行ではないですか!おもだかの花びらを蒔いちゃったりしてご機嫌な感じ。

一方、青虎さん演じる閻魔大王。最近、地獄に来る人が減って困ってる(笑)六道の辻まできて、やってくる人をどうにか攻め落とそうと待ち伏せます。

そして二人が出会い、閻魔大王が博奕に興味を持ったのが運の尽き(笑)博奕対決になるのです。閻魔大王や鬼たちは博奕を知りません。まんまと身ぐるみはがされ、しまいには極楽行きの通行手形まで渡してしまうのです。

猿之助さんの踊りもたっぷり。簡単そうに見えるけど、片足でバランスも多く大変そうな形や振りの連続です。このままずっと観ていたいと願ってしまうくらい楽しかった。

サイコロが登場します。舞台映えする大きなもの。本当に投げる時と、差し金のサイコロに差し替える時がありました。閻魔大王が負け続けるわけですが、猿之助さんが本当に投げる時、その数が出ないのが不思議。出ちゃったらどうするのかな(笑)コツがあるのか興味津々でした。差し金のほうを担当するのが後見の笑猿さん。これが上手い!出したい1が出た!と思ったら、ためてコロッと変えるタイミングが絶妙でした。笑ってしまった。

青虎さんの閻魔様は最初は威厳があるのだけど、どんどん博奕にハマってしまい、しかも頑固だから賭ける数字を変えない(笑)持っている物を全部、取られてしまった。その時の滑稽な感じが面白かった。弘太郎時代は獄卒だったので大役を務めている姿に感動でした。

獄卒の鬼は段一郎さん右田六さん。「ひとつなぎの会」の連獅子コンビです。怖いのか、そうでないのか(笑)ユーモラスなところもあり楽しかったです。

曲も楽しい。こんな冥土の旅なら嬉しいかも(笑)

ラストは、極楽行きの手形を首に下げ、手を振りながら軽快に花道を行く猿之助さんでした。行く先も楽しそうだな。この余韻がたまりません。魂が反応するというか、揺さぶられるというか。観ることができて嬉しかったです。

2011年亀治郎の会パンフレット
第九回にちなんだ裏表紙

もう一つは「神霊矢口渡」壱太郎さんのお舟が切なく素敵でした。一目ぼれをした相手と来世で一緒になりたい、と命をかけて想い人を守ります。歌舞伎あるあるで、好きになったその日に不幸になるのはわかっていても辛いです。

猿之助さんがご指導だそう。猿之助さんのお舟を観たことがないからわかりませんが、内なる情熱がラストシーンに溢れて、壮絶な最期に心を持っていかれました。太鼓の音が響いた時、涙が出てきた。恋をしてキラキラとする初めの頃が甦って切ない。一途で純粋な少女でした。

父、頓兵衛は鴈治郎さん。先ほどの又平が吹き飛ぶ悪の塊。思いがけず娘を刺してしまっても、邪魔をする娘を許さない。ひどい。。鴈治郎さん、本当にひどい。そんな感情移入をしてしまうほど迫力あるラストシーンでした。

お舟が恋してしまう義峯は鴈乃助さん。品があってスッキリ二枚目。妻の うてな はなんと段之さん!美しく大活躍です。

頓兵衛の下男、六蔵は亀鶴さん。久しぶりに拝見しました。やっぱり上手い。猿之助さんともガッツリお芝居するのが観たいと思いました。

31年前の猿之助さんと段四郎さんの写真を見つけました。

文化デジタルライブラリーより

1991年のこの時、猿之助さんは15才くらいでしょうか。段之さんが同じ うてな ですよ。今回の壱太郎さんの海老反りも美しかったです。その後、2005年第四回亀治郎の会でも演じてます。私はまだ歌舞伎と出合っていなかったのが残念です。その他、演じているのかわかりませんでしたが、猿之助さんのお舟も観てみたいと思いました。

お舟が戸を開けて義峯を見た瞬間、壱太郎さんが猿之助さんを彷彿とさせるような。。この出会いが運命を変えてしまうのですよね。とても印象的でした。


第三部は観ることできず残念ですが、一部二部を観ること叶い大満足でした。大阪まで行ってよかったです。弥次喜多千穐楽から京都、そして大阪。とても良い流れで旅を結ぶことができ感謝です。

明日から仕事が忙しくなるので頑張れそうです。

千穐楽が盛り上がりますように。


aya


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