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私にエンジンをかけてくれるもの

約13年前に歌舞伎に出合いました。

当時の私はプロのブライダル司会者でした。司会が。。というよりブライダルの現場が大好きで、新郎新婦はもちろん、お客様の幸せそうなオーラを浴びることが喜びでもありました。

仕事が大好きだったので、かなりストイックな体調管理をしたり、人間関係にも気を使ったりしていたので、休みの日も司会のために過ごしていたようなものだったと思います。

それが楽しいと思っていました。

ある時、突然に声が出なくなりました。
風邪をひくこと一つにも神経質になっていたのに、人生で声が出なくなることがあるなんて想定外で心が追いつきませんでした。その週末から一か月間の仕事が全てキャンセル。お詫びのメールやら、引継ぎの連絡やらで休む間もなく日々が過ぎていきました。

お陰様で薬で治り復帰することができました。原因はストレスだろうと言われましたが、何に気を付けたらいいのかわからず、また忙しい毎日に。

声が出なかった生活は私のトラウマになり、また出なくなったら。。と不安が常に付きまといます。体調管理のストイックさに拍車がかかりました。仕事キャンセルをして以来、事務所との関係もギクシャクしてしまいました。

頑張って頑張って頑張った結果がこれなの。。と、心も不安定になっていた時に出合ったのが歌舞伎でした。

もともと興味があり、歌舞伎好きな友人が出来たことで誘ってもらったのが縁です。歌舞伎座のチケットを取ってもらいましたが、いきなりの大劇場に緊張(笑)その前に一人で予習をしようと検索で見つけたのが「亀治郎の会」でした。

市川亀治郎さんは、その前の年に大河ドラマ「風林火山」の武田信玄を演じていたので知っていました。その方の自主公演です。何よりチケット代がお安いので即決(笑)足を運ぶと、そこは熱気に包まれていました。

圧倒されました。大興奮だったのです。
現代劇のような照明やセットなど、派手な演出はなくアナログの世界です。でも一つ一つが生きてそこにある。形あるものだけでなく、音や光、全てが生きていました。全ての作り手がストーリーに心を寄せた世界観だと伝わってきたのです。

特に、出ずっぱりの亀治郎さんからは生き様というか、伝統芸能の世界で受け継がれていく’血’を感じました。こんなふうに生きている人がいるのだ、と私の心のエンジンがアクセル全開でかかりました。

こんなふうに私も生きてみたい。
生き生きと生活したい、司会がしたいと心が動き出したのです。

それから10年、司会を続けることができました。目標の’司会の収入だけで生活すること’も達成できたので、数年前に活動を停止しました。

今、思います。
この時、私の中の本当の「楽しい」エンジンもかかってしまったのです。
まさか毎月欠かさず歌舞伎公演に行くほど夢中になるとは。

仕事をストイックに遂行することが楽しいと思っていたけれど、それは私の「楽しい」ではなかった。歌舞伎に出合ってから、何だか人生が楽しく、生きることが楽になったように思います。辛いことがあると歌舞伎を観に行っています。

中でも亀治郎さんは四代目猿之助になった今も、心にある「楽しいエンジン」をかけてくれる役者さんです。

次の舞台が楽しみでならないのです。

aya

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