見出し画像

「絶対、俺変わったりしないから」


深夜12時半。

数人の友人との久しぶりの飲み会から流れで来たカラオケだった。
1人の男友達が10数曲目に何気なく入れたこの曲で、私は不覚にも泣きかけた。
というか途中から、こっそり泣いた。


一応言っておくと、この男友達のことが好きだからでも、酔っ払っていたからでもない。まあ多少はお酒も残ってたけど。


「絶対 俺変わったりしないから
俺変わったりしないから
ずっと君が好きだから」

初めて聴いた曲のサビのこのフレーズが、そのときなぜかとても刺さったのだ。

https://youtu.be/ypCsqWgf8XI


忘れらんねえよ の 「俺よ届け」。

大ヒット少女漫画のパロディを思わせるタイトルをつけておきながら、主人公はキラキラ風早くんとは対極の、なんとなく残念臭の漂う男。

「君」が大好きで、たとえ「君」がどんな姿になっても彼氏と貸切露天に浸かって愛してるとか言い合ってても嫌いになれない。にも関わらず直接はうまく話せない。声とか裏返る。無念。

そんな「俺」が、サビで何度も繰り返すのが先程のフレーズだ。叫ぶように、真っ直ぐに、何度も、何度も繰り返す。

私は、生まれて初めて、歌を聴いて「羨ましい」と思った。今まで、語り手の主人公に感情移入することはあっても相手側に立って聴くことなんて一度もなかったのに。歌詞に出てくる「君」が、心から羨ましくなった。

一度でもいいから、誰かにそんなふうに必死に想われてみたい。
それも彼氏でもない、自分はその人に何を返しているわけでもない、というかほとんど気を持たせることもしていないような相手から「絶対変わらない、ずっと君が好きだ」と思われるような何かを、自分は持っているとはとても思えない。そもそも何かってなんだ。私になくて「君」にあるものはなんだろう。


今自分は誰の愛する女性でもない、という事実は、私にとって明日を普通に元気に生きていくことに特に支障は来さないけれど、ほんの少しだけ影は落とす。
時々ぼんやりと、「何がダメなのかなあ」なんて考えたりもする。とても楽しい毎日だけれど、選ばれない、という思いがいつも心のどこかについて回る。

だから私はたぶん、「絶対変わったりしないから」という言葉をもし誰かからもらったとしたら、自分がその人を好きかどうかは関係なく、一生ずっとそれを大事に抱えて生きるんだろうなと思う。

本当は、別にいつか変わったっていいんだ。
一度でも誰かから「一生の恋だ」と思えるくらい好きになってもらえたら、そんな自分になれたら、きっとその先どんなに自分を嫌いになりそうな夜があっても乗り越えられる気がする。


でも今もほんの少しだけ思い出す、私が「絶対変わったりしない」と思った相手は、きっと私がそう伝えたら困った顔でまた笑うんだろう。

あなたの真っ直ぐな、不器用な、誠実な熱い想いで、私のこんな不毛な恋を覆してくれーと架空のダサ男に思う夜だった。当面はそんな相手もいなそうなので、俺よ届けを聴いて手を打とう。

ありがとう忘れらんねえよ柴田さん。


おわり。











この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?