◆DAY55 孤独な夜のシンルンボ

*2019年8月21日* 

朝から、猛烈にミロンガへ行きたい気分な水曜日。

幸い東京ではほぼ毎日のように夜な夜なミロンガが開催されていて、親切な方が「タンゴイベントカレンダー」なるものを管理してくれている。

とはいえ、各ミロンガがどんな雰囲気かも、どのミロンガが自分に合うのかわからない。

先生に「今日おすすめのミロンガありますか?」と相談すると、5つほど候補を送ってくれた。そのなかで迷っていると、「シンルンボに行くなら、初めは誰かと一緒の方がいいと思うから」と言ってくれ、たけし&あや先生とご一緒させてもらうことになった。

四ツ谷にあるシンルンボは、以前たけし先生がマスターをしていたアルゼンチンタンゴバー。踊らず飲みながら音楽を楽しむもよし、踊ってもよしな自由な雰囲気と聞いていて、ずっと行きたかったお店だ。

その日はカウンターで飲んでいる人が中心で、たまにカップルが踊りにフロアに出る感じ。もし踊りたければ、たしかに誰か連れがいないと手持ち無沙汰になるかも。連れてきて頂いて良かった。

それなのに……。私ときたらどうしてこう面倒な性格なんだろう。
先生が「踊ろう」と誘って下さったのに、すっかり踊る気分じゃなくなっていた。

いつも踊りたくても踊れない時は、「私は飲みにきてるんじゃない、踊りたいんだ!」と欲求不満を募らせているというのに、この天邪鬼っぷり。我ながら嫌になる。

お誘いを固辞してワインの杯を重ねているところに、あや先生が合流。

二人が踊り始めた。

あや先生は、口元に微かに笑みを浮かべ、天使のような顔で踊っている。その表情を見ていたら、今この瞬間、消えてしまいたくなった。
完璧に調和している真っ白な世界に、一点落ちるインクの染みのような存在の自分。お前は邪魔ものだ、と宣告されている気がした。

孤独は誰かといても、いや誰かといるからこそ、
痛切に感じるものなのかもしれない。

その日は、泣きながら眠った。


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