月牙天衝と斬月、天鎖斬月の考察。

主人公のメイン武器

BLEACHにおける主人公の黒崎一護の斬魄刀。
始解では「斬月」。
巨大な包丁のような剥き出しの剣で柄に当たる部分は布のような物が巻かれている。
見た目通りかなりの破壊力と頑強さを誇り、シンプルに強い。
また巻かれている布はかなりの強度を持っていて鎖鎌のような使い方もできなくはないが基本的に一護は剣として使っていた。
卍解では「天鎖斬月」。
始解では巨大だった刀身がかなりコンパクトな日本刀のような物に。
また刀身までまっくろな刀となった上に死覇装まで変化し、黒いロングコートのような物になった。
特筆する能力は動きが速くなった、というシンプルなフィジカル強化。
そのロングコートまでが天鎖斬月の能力らしく、破れたロングコートが一護の霊圧の回復に比例して修復しているらしい、との事である。
今回、その後の千年血戦編での二刀の斬月、そしてその斬月同士が合体した大剣、さらにそこから出てきた始解の斬月のような剣については他にも自分の解釈を説明しないといけないので取り扱わない事にする。

主人公の唯一の必殺技

月牙天衝、黒崎一護の斬月が持つ唯一の特殊能力。
自分の霊力を食わせた斬撃を衝撃波として飛ばす、シンプルだが見栄えのする技。
虚化などする事で色や威力が変わったりするが基本は「飛ぶ斬撃」である。
霊圧で色が変わるのは色材の三原色、あるいは光の三原色に絡めているから、という話の考察を見たがそこについてはちゃんと考察しきってはいないがひとまず自分の中では
滅却師→滅の字は「水を被せて火を消す」から水色、シアンが滅却師の霊圧
虚→滅却師が滅却する対象だから火。だから火の色に近いマゼンタが虚の霊圧。
死神→消去法でイエロー。もしかしたら斬魄刀を破面の「鋼皮(イエロ)」と捩ってるのかもしれない。
全ての要素が合わさった天鎖斬月の黒い月牙天衝は色材の3要素が全て混じった故、と考えられる。

天鎖斬月のモチーフ

シンプルに自分の考察から。
これは「皆既日食」である。
卯ノ花八千流の斬魄刀(あくまで自分の考察)が「皆既月食」で「死」という凶事であると同時に「生まれ変わり」という吉事の前兆である、という強烈な2つの側面を有しているがこの黒崎一護の斬魄刀は「月」よりも強い二面性を持っている。
月、あるいは地球や他の天体は自分から光を放つわけではなく、あくまで「太陽」に照らされてその反射でその存在を視認できる。
つまりそうした月やその他の惑星という巨大な力に対してさえも大きな恩恵を与える存在の象徴が「太陽」。
そしてその太陽だが各地の神話においてはほぼほぼ「主神」クラスの神の中でもさらに偉大な存在として存在する。
そして日本においては天照大神が有名だろう。
そしてその天照大神が須佐之男の我が儘に呆れて天岩戸に隠れてしまい、太陽が消え失せた「日食」のエピソード。
そして天鎖斬月の「天鎖」とは天照大神が天岩戸から出てきたあとにもう日食を起こさないように、岩戸に封印をした際に用いられた鎖のことである。

「斬月」の意味

天鎖が日食、を表しているとして斬月とは何か。
その前に太陽についてもう少し掘り下げる。
日本の神話においての天照大神のように世界各地の神話における太陽神とは絶対的な存在で「神々の王」というつまり力ある者の中でもさらにトップに立つ存在である。
それを人間に落とし込むと日本なら「天皇」その他の国では「王」、「皇帝」といったその国のトップ、最大権力者、最大の支配者となる。
それを日食と結びつけると「権力の侵害」となり、国の根幹を揺るがす大きな凶事となる。
とはいえ皆既月食が「死」と「生まれ変わり」の2つの側面を持つと同様に皆既日食のそれもまた2つの側面がある。
皆既月食が個人レベルでの「死」と「生まれ変わり」であるのに対して皆既日食は人種、国単位での「滅亡」とそれを支配する「新たな王の降臨」。
つまりは「改革」を意味する。
それが天鎖斬月、全体の意味するところならば「斬月」とはなんなのか。
それは「変化への一歩」。「挑戦」とか「始まり」とかその辺の意味。
一歩そのものは小さいが全体から見ると大きなもの。
日食は太陽を月が隠す現象であり、別に黙っていれば終わる。
現代では単なる天体ショーでしかないがそれを「改革」に当てはめると太陽を隠す月を斬るというのは「自分の手で切り開く」と意味する事になる。
外からショーとして眺める観客ではなくそのショーの当事者、BLEACHという作品の主役である黒崎一護という役どころとしては非常に主人公らしい力ではないだろうか。

月牙天衝のモチーフ

「皆既日食」が斬魄刀、「天鎖斬月」のモチーフならばそこから放たれる「月牙天衝」とは何なのか。
コチラも最初に自分の答えを言えば黒崎一護のそれは「母離れ」である。
この月牙天衝であるが使い手は二人。
黒崎一護とその親、黒崎一心が使っている。
基本的に「黒崎一護」の力として使われてきた「月牙天衝」だがその父「黒崎一心」が使う事で考察対象として「何故一心が使えるのか」 、「月牙天衝とはなんなのか」となっている。
さらにはファンの間では一護の最強形態ともされる「無月」時に繰り出される「最後の月牙天衝」、「俺自身を月牙にする事」にも関連し、一心がその「最後の月牙天衝」を知っている事も重なってくる。
そもそもとして黒崎一護の力を
・過去のユーハバッハの力である滅却師の力
・白一護の力である虚の力
としているわけだがそれはつまるところ黒崎一護の母親、黒崎真咲から「母親」から受け継いだ力である。
過去のユーハバッハは母親としての「優しさ」の側面と白一護は母親からの「厳しさ」 の側面。
白一護がツンデレなどと言われているのであるいはその役割は逆かもしれない。
それを父である一心の死神の力でバランスを取り手にしたのが月牙天衝。
ちなみに「月牙」は中国語で月の牙から日本で言うところの「三日月」を指しており、「げつが」という読み方の「月娥」という月を司る女神、あるいは精霊が中国神話にはいるとのこと。
さらに加えると黒崎一心の剡月の「剡」も中国語で使われる文字であり、それを考えると一心の本来の家名である志波家、あるいは死神全体が中国神話をモチーフとしていると考えられるがそれを考え出すときりが無いのでここではこのぐらいで止めておく。

無月


話を戻し「月牙天衝」とは母親の力、とすると月牙天衝は母親の「優しさ」と「厳しさ」からくる力、つまりは黒崎一護の「人間性」の性質の成長、年齢もあいまって「反抗期」ゆえの外への反発力と考えられる。
子供として母親に甘えたい。
だが男として、そして長男として甘えられない、守らなければならない。
強くあらねばならないという2つの側面で揺れ動く力が「反発」として外にでた暴力性が黒崎一護の月牙天衝。
一方で一心のそれは黒崎真咲に対する思い、こちらは「母親」である以上に「妻」である思い出。
黒崎真咲の虚化を食い止めるための手段ではあったが魂を同調した結果として真咲の力を得た。
そして一心も一護も「最後の月牙天衝」が使える、とあったがそれはすなわち「母に守られた子供から男になる」、つまりそれが「母親離れ」。
それはつまるところ「過去への執着を捨てる」という事になる。
一心はその術を知りながら発動しなかったのは一心もまた一護にとっては古き存在、「過去の存在」であり、同じ古い存在である黒崎真咲への「 過去の執着」、言い換えれば「思い出を守る」のが一心の役割。
しかし今を生き、未来に向かう黒崎一護にとって思い出は大切な事ではあるが新たな出会い、縁のためにも囚われてはいけない物。
「過去を乗り越える」それが黒崎一護というキャラに課せられた役割であり、「 月牙天衝」と「最後月牙天衝」がそのトリガーだと思う。
そしてそれを天鎖斬月、「皆既日食」という改革と「母親離れ」という過去を乗り越えるダブルミーニング。
この「過去との決別」こそが黒崎一護の「無月」である。
無月、月がないという事で皆既日食よりも新月に近いのだが皆既日食は並びが太陽→月→地球と重なっている状態。
一方、新月もまた太陽→月→地球と重なっている。
皆既日食は日中か、新月は夜か。
非常に雑な説明で詳しい人からは間違いを指摘されてお叱りを受けるかもしれないが自分の解釈、「改革」と「母親離れ」から考えた場合、やはり最後は「斬月」から、つまり0からの「挑戦への第一歩」でありそれは「夜明け」などとも比喩される。
だから月が見える時間帯である「夜」の力を纏う一方でその中に秘められたのは「朝」という新しい太陽の力、「古い世界との決別」を宿している。
だからこそ崩玉と融合し、斬魄刀と融合を果たして「過去の力」である卍解と帰刃を発動させた崩玉融合藍染惣右介、所謂はんぺんなどと言われる藍染惣右介の「古い夜」を「新しい太陽」が破るという事で「無月」になるんじゃないかな、と思う。

まとめ

主人公の話なので長くなったが
・天鎖斬月の天鎖とは「日食」を意味していて「古い権力者」の失墜、滅亡と同時に「新しい力の誕生」である改革を意味している。
・斬月とは日食という現象を天体ショーとして遠目から見る観客ではなくその日食という現象が意味する「改革」の当事者であり、太陽を隠す月を斬る、改革の一歩を「切り開く」事を意味する。
・月牙天衝とは「母親離れ」であり、「過去への執着との決別」。
故に黒崎真咲と同じ「過去の世代」 の存在である黒崎一心は思い出を守る為に「最後の月牙天衝」を知りながらも使わず、「今の世代」である黒崎一護が未来を進むために「最後の月牙天衝」を放ち、「過去への執着」の塊である崩玉融合藍染惣右介を打ち破った。
という事に自分の解釈ではそうなる。



オマケ

最後にオマケではあるがここからは本当にただの妄想で「月牙天衝」のうち、「月牙」を中国神話の「月娥」という月の女神、としたなら残りの「天」と「衝」。
「天」は天体の現象や天体そのものの比喩とする可能性もあるし「神」と捉える事も出来る。
そして面白いのが「衝」。
破道の1も「衝」なんだよね。
実際、威力は全然違うとはいえシンプルな性能だけみると衝も月牙天衝も大きな差はない。
つまりは黒崎一護が死神として年月が経ち、山本元柳斎のように斬魄刀の力を完全に引き出せば「月牙天」+○○と鬼道の名前がついて行くのかもしれない。
月牙天・五龍転滅とかになったら流刃若火とか比較にならない破壊力かも、と妄想してしまう。
オマケについては考察の枠を完全に飛び越えているので完全な二次創作と考えてもいい無駄話。
ただ、「鬼道」の上に鬼の上位互換(裏破道は語感から裏技やチート行為が連想されるため除外)として「天道」や「神道」があったら、あるいは黒崎一護の後に出来上がったらそれもまた一護の「改革」の「一歩」にも当てはまる。
もっとも全てこじつけだらけではあるが。

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