飢樂廻廊と刳屋敷剣八の考察

飢樂廻廊のモチーフ

最初の頃に書いた記事で龍紋鬼灯丸は7代目剣八の刳屋敷剣八の飢樂回廊と同じくらい強いポテンシャルがある筈、という事を書いた。
これは何故そういう結論を出したのかというと両者のモチーフが同じ神話の神である、というのが当時の、といってもたった1ヶ月ぐらいではあるのだが考えであった。
今はまた最終的な結論が変わったのではあるが両者のモチーフとなったのは変わらない。
そのモチーフとなったのはインド神話における日食や月食を引き起こす神、というか悪魔に近い存在こラーフとケートゥである。

神話の概要


ラーフとケートゥが登場するのは乳海攪拌。
ソーマと言われる不死身になる飲み物を作る事になった神々だが神々の力だけでは作れず、そのため敵対している悪魔、アスラ達にもそのソーマを分ける事を条件に出して協力を求めた。
そして神々とアスラの力によってソーマは完成したがアスラを出し抜いて神々で独占しようとしたのだがそこへラーフというアスラが神に変装してソーマを飲んだ。
それを発見したのが「太陽」と「月」の神であり、インド神話における偉大な神であるヴィシュヌ神に告げ口するとヴィシュヌはラーフの首を切断した。
ソーマを飲んでいる途中で首を切断されたために首から上だけ不死身となった「ラーフ」とラーフと切り離された身体だけの「ケートゥ」となった。
ラーフは告げ口した太陽と月を追いかけて喰らう(日食と月食)のだが首から下がないので直ぐに太陽と月は出てくる。
太陽の通り道の「黄道」と月の通り道の「白道」。
その交点が一つの天体だと思われて北に見えるものを昇交点、その神格化がラーフ。南に見える降交点をケートゥとした。
またそれとは別の考え方ではラーフを日食、月食を引き起こす「暗黒の星」としたり、ケートゥをラーフの子供達として32の「彗星」とされている。
話はまた乳海攪拌の話に戻るがもともとラーフは複数の蛇、あるいは龍の頭を持った怪物とされ、切り離されたあとはラーフは「ドラゴンヘッド」、ケートゥは「ドラゴンテイル」とされている。

飢樂廻廊の文字と始解の解号 


飢樂廻廊はこのラーフとケートゥの二つの「天体」の性質を主体として強く表に出した斬魄刀で飢樂という字の樂は神事において木の上に白(鈴)を糸で繋げた楽器のような物があるらしく、その象形文字とされる。
この樂の捉え方は木の上、つまり空の上として「白」を糸で繋げたものを「白道」、つまり月の通り道と考える事が出来る。
そこまで回りくどく考えなくともシンプルに神事に用いられる楽器のため「神」を現すものとしても良い。
その上で「飢」と「廻廊」。
ラーフは不死身であるが首から下がないので食べた先から無くなり常に満足する事はなく、喰らい続ける存在であり、「暗黒星」と信じられていた時は日食、月食をラーフ、ケートゥの巡回路、として解釈すれば飢樂廻廊の名前に当てはまる。
また解号の「瑞祥屠りて生まれ出で、暗翳尊び老いさらばえよ」であるがこれはケートゥを意味しており、ソーマを飲んで不死身になったラーフだがソーマを飲み込む途中で首から切り離された事で生み出されたケートゥは不死身ではない。
瑞祥とはめでたい事の兆し、吉祥。
神事や神話において太陽だとか月が瑞祥に当てはまるがそれを屠るラーフから生まれた存在で、ラーフと同様に暗翳、太陽や月を隠す存在でありソーマを飲まなかった事で老いて死ぬ存在を示していると思われる。

始解と卍解の名前が同じ理由。そして能力の違い。


天体の運行そのものとしては黄道と白道の昇交点、降交点と言う違いはあるが基本的には日食も月食も同じ現象ではあるものの神話に置いてラーフは親であり、ケートゥはその32体の子供。
始解で表れる「30体程度」と変に数をぼやかされている部分はこの考察が正しければケートゥを模した32体となる。
ラーフは太陽や月を喰らう単独の「暗黒星」だがケートゥはその32体の子供達は「彗星」である。
この2つの考え方、
・ラーフとケートゥは日食、月食を引き起こす同じ現象
・ラーフは日食と月食を引き起こす親、ケートゥは32の彗星を示す子供
を合わせた結果、卍解と始解は同じ名前、本質は同じ物だが実際は規模や数が異なるという違いになっていると思われる。

刳屋敷剣八は悪人か?

モチーフは何か、と考えるまでもなくこのような凶悪な斬魄刀を持つために本質は悪人とも捉えかねない刳屋敷剣八。
実際、ネットを見ているとそのように考察したりコメントする者もいるようだが果たしてそうだろうか。
確かに剣八と言われる存在は卯ノ花八千流、更木剣八ともに凶悪な罪人だった過去を持つが作中ではそれぞれに護廷十三隊の隊長として活躍しており、気性こそ荒っぽいがそれぞれ戦闘専門の11番隊を率いる「剣八」の名に恥じぬ存在であろうとしている。
そもそもとしてラーフもまた発祥のこそ悪魔の類として神話に登場したが仏教においては開祖である釈迦の子供であり弟子である「羅睺羅」として。
日本の神話においてはスサノオと習合した。
刳屋敷剣八も過去には何らかの罪人だったかもしれないがラーフが羅睺羅やスサノオに転じたように刳屋敷剣八もまた荒ぶる死神「剣八」として単なる悪人とは異なると自分は考える。

零番隊に声がかかった理由

零番隊に昇進の話があったと思うが刳屋敷は何故呼ばれたのが疑問に思っていた、とされており何故声がかかったのかは謎であるが自分はこの卍解の性質を考えると何となく理由は分かった。
あくまで自分の考察、妄想ではあるが恐らくこの刳屋敷が零番隊に入っていれば死神達の装備、死覇装と斬魄刀という装備も斬・ 拳・ 走・鬼の概念も新たに増えるか、もしくは統合されて数が減るか。
それだけ「日食と月食を引き起こす存在」が零番隊に入るという事は大きな変化をもたらしていたと思われる。

龍紋鬼灯丸、斑目一角について

当然ながら龍紋鬼灯丸と飢樂廻廊は同じ神、悪魔がモチーフと自分は考えているので龍紋鬼灯丸も当然ラーフである。
龍紋と鬼灯(偽りの意味)によってドラゴンヘッドと言われるラーフ、姿形がない虚像の天体のラーフを意味していると思ったからだ。
ただ、そうなると何故同じモチーフで片方は作中最強レベル、片方は最弱の斬魄刀と言われるほどになっているのか、というと龍紋鬼灯丸はラーフであってそれが全てではないから。
ラーフというのは龍紋鬼灯丸の力の一端。
その辺がラーフとケートゥをモチーフとされる飢樂廻廊と龍紋鬼灯丸、斑目一角の違いではないかと自分は考えている。

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