新入団員の勧誘

二年に一度、大体年末から年明け2月位までこの時期がやってくる、新入団員の勧誘だ。今のご時世、なかなか消防団に入ってくれる人間は少ない。地元に残って仕事に就いてる人や、親が消防団経験者や農家の後取りに声を掛けるのが相場ではあるが、消防団に入らない事を条件に家業を継いでる息子が居たりする。少子化の中でメンバーを見つけるのは大変だ。当たり前だが入ってくれれば誰でも良いと言う訳にはいかない。自分の偏見かもしれないが、なんのつながりもなく自分から入りたいと言ってくる人はやめた方が良い。消防オタクが居るかどうか分からないが、ポンプ車や制服に興味が有るだけで、出来るような事では無いことは自分でも分かる。

事実の上で積極的に地域の安心安全を預り、人の生死に関わる仕事をやりたいとは、なかなか思えない。

消防団の淵源は江戸時代の火消しから始まる。隣組のコミュニティがあり、どこかで火事が有ると駆け付けて一番早く纏った所が中心者になり火を消すのだ。その文化が今に至り消防団が出来た。日本初のボランティア団体とも言われている。消防署よりも先に存在していた訳である。一般の市民からすると火事以外では祭りの警備や居酒屋などしかも多人数で見かける事がある。実際にどの様な活動をしてるのか分からないので消防団に対する世間の見方は意外と冷たい。

来期の分団長はMさんに決まった。Mさんは地元の酒屋の息子で、自分も子供の頃お菓子を買いに行ったことが何度か有った。自分の同級生の女の子がたまにレジを打ったりして手伝って居たが、その娘はMさんの妹と言うことになる。そんな関係もあり自分が入団してからMさんは比較的に大切に接してくれた。ある日、Mさんから新入団員の候補と会うことになったから大地も来てくれないかとの電話が有った。

クリーニング屋を営んでいるW君と約束が取れて近所のうどん屋で会うことになった。話し合いはうどん屋の一番奥側の4人席で行われた。Mさんはいつになく明るい表情でW君に消防団の説明をしてくれた。お酒は飲むの?消防って聞くと固いイメージがあるかもしれないけど、楽しいこともいっぱいあるからさ~、キャバクラとかも行くし新年会、暑気払いの時とか吉祥寺でやったりすんのよ。

するとWくんは、消防の活動は良いですがキャバクラってどういう事ですか?絶対行かないし!なんでそんなところ行って楽しいのか理解できない。わざわざ女の子の機嫌とって高いお金払って!馬鹿じゃないの?活動の一環でそういう所に行かなければいけないのなら、俺入りませんよ!とMさんに怒りを込めて言い放った。

さすがに次期分団長のMさんもそこに食いついてくるとは思いもせず、びっくりした表情。

それもそのはず、W君の親父さんはOBの中でも語り継がれているほどの呑み好き遊び好きで有名だからだ。消防団旅行で語り継がれている武勇伝はたくさんある。のちにW君は入団したわけですがどうなったかはまたの機会に。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?