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Week 2, episode 1: 他国を訪れるとは

2週目の初日、2022年8月26日金曜日のこと。
私はとある面白い旅人と出会った。

大学のバスツアーを終えた後、
カフェでシナモンロールとデカフェのコーヒーを手に入れ、
新しく買った本を読もうと公園の池の前に座った。
フィンランドの「頑張る」概念、”SISU”について学ぶための本だ。
その日は、ゆったりした時間の流れを感じながらゆっくり過ごそうと思い、
本を開いたその時、誰かが話しかけてきた。

” Excuse me. Where did you get the coffee?”
その男性は大きなリュックを背負い、
人当たりのよさそうな口調で
コーヒーを売っている場所を聞いてきた。
私はマップを使いながら丁寧に教えた。
どうやらフィンランドに旅行しに来たようで、
その日にタンペレに着いたばかりだという。

"Where are you from?"
お互いにそう尋ね、
私が "Japan"と口にした瞬間、
彼の眼が少年のようにキラキラと輝き出したのを、私ははっきりと感じた。
「めちゃくちゃ日本大好きで!
日本に2回行ったことがあるんだけど、
最初に行った時に衝撃を受けて日本語を独学で学び始めたんだよ!!!!」
そう言うと彼は私の隣のベンチに勢いよく腰かけ、
日本への愛を語りだした。

日本へ行った時、美しい街並みに感銘を受けたこと、
ラーメンが美味しかったこと、
大阪や広島、奈良の方面まで行ったことがあること
(奈良が本当に好きらしい)、
日本旅行から帰ってきた後、日本語を勉強し始めたこと。
そして、福岡の語学学校へ通う予定だったが、
コロナのパンデミックで行けなくなり、
今後行ける可能性が薄いということ。
たくさん話してくれ、私も日本の話題で反応しやすかったため
話は盛り上がった。

そんな中、彼は旅をする中で大事にしていることを教えてくれた。
「僕は旅行先の国で、ただ観光地を訪れて、写真を撮って、
ただの”観光客”になるのは好きじゃないんだ。
僕はきちんとその国の文化や生活を学んで、経験したいんだ。
だから、日本のお寺や神社に行っても、
どのような作法があるのかを学んで、
それを実践することをすごく大事にしたんだ。
それがその文化や国に対する敬意だと思わないかい?」

私はこの言葉を聞いてハッとした。
(留学で来ているのにも関わらず、
私は多分、まだまだ"観光客"気分でタンペレにいるのかもしれないな。)
珍しい建物や街並み、食事や娯楽など、
表面的なものにばかり気を取られて、
そこにある背景や歴史などを全く見ていなかった。
なぜこんなにもレンガの建物が多い街なのか。
なぜムーミンというキャラクターとその物語は
フィンランドで生まれたのか。
なぜサルミアッキがフィンランドで愛されているのか。
フィンランドの人の習慣と"SISU"はどのような繋がりがあるのか。
それらを学びながら、自ら飛び込み、肌で感じる。
この5か月間、そんな過ごし方をしたいと強く思い、
背筋がピンと伸びた気がした。

その後、早口言葉で大笑いしたり、
彼の好きな日本のガールズハードロックバンドの曲名を一緒に探したり、
言語の難しさについて語ったりするうちに、
すでに1時間が経っていた。
楽しい時間はあっという間だ。

「今日はこれから少し寝て休んだ後、
湖の近くの公共サウナに行くんだ!」
そう楽しそうに語る彼は、若く見えた。
年を重ねるごとに若くなる人とは、
こういう人の事を言うのだろうと思った。

彼を例のカフェまで案内した私は一人、
ムーミンミュージアムへと向かった。
タンペレを、フィンランドを知り、
自分の感性も大切にしながら
この街と交わっていく。
小さいけれど熱い意志が
私の心の中で灯り始めた。

~岡のあとがき~
ムーミンミュージアムに行った後、
私の中で話題沸騰だった
電動スクーターにも挑戦してみようと思い、
早速アプリを入れてみました。
使い方が全くわからずもたもたしていると、
現地の見知らぬ人が教えてくれました。
乗っている時の風があまりに心地良かったため、
思わずそのまま自宅まで帰ってしまいました。
19時を回っていても外は明るく、
30分程、フィンランドの自然の中を
颯爽とスクーターで駆け抜けていくのは
最高に気持ちが良かったです。
また一つ、
新たなフィンランドを知れた気がします。

厄年だ厄年だ~なんて嘆いておりますが、
人との出会いや人間関係については、
今年も本当に恵まれています。
周りの人や環境にたくさん支えられているからこそ、
困難があっても折れないで来れたんだなと、
感謝の気持ちでいっぱいです。
このことを忘れずに、
留学生活も過ごしていこうと思います。

Viiko kaksi, episodi yksi (week 2, episode 1): Loppu (おわり)



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